ただいま
先週末、カナダから帰国しました。予定していたモントリオール大学でのスタジオワーク以外で、みなさんに報告したい面白いことがひとつあります。それは当市にあるカナダ宇宙庁へ呼んでもらったことです。

カナダ宇宙庁長と開発部長と見学

カナダ宇宙庁と言うと、この世界では国際宇宙ステーションに搭載されているロボットシステム「カナダアーム2」の開発で有名なところです。その前身である「カナダアーム1」は、スペースシャトルに搭載されている優秀なロボットアームで、その成功の結果、「カナダアーム2」は2001年4月にNASAから打ち上げられ、国際宇宙ステーションの組立と整備において、今も重要な役割を果たしています。機材や補給品を動かしたり、宇宙飛行士の船外活動を支援したり、ステーションに取り付けられている器具やその他のペイロードを補修する、という任務をすべてこなすこのロボットアームがなければ、今の宇宙における研究開発活動はもっともっと大変な苦労が伴うものとなっていたはずです。

そして、現在この宇宙庁にある研究所では、「カナダアーム2」をさらに進化させるための研究が進められていました。今回は、その様子をとても近くで見せてもらえることとなりました。こんな機会はなかなかないもので、とても貴重な体験となりました。

中でも、僕個人が一番興味を持っているのはロボットが動くアルゴリズムです。「カナダアーム2」は、ステーションの背骨部分を移動し様々な「ドッキング」と呼ばれる作業を行っていますが、驚いたことにその「ドッキング」作業の際に、次の司令やエネルギー、情報の読み取りも同時に行っているのです。これはとても最先端なアプローチであり、僕が取り組んでいる研究にあるスマートシステムへ応用すれば、大きく研究が発展する可能性にもつながる重要なヒントとなるものでした。

「EXPO1967]のアメリカ館

そして、モントリオールでもう一つ思い出すのは、1967年に開催されたモントリオール万国博覧会ではないでしょうか。今ではほとんどのパビリオンはなくなっていましたが、二つだけ現在もそこに残されていました。一つはアメリカ出身の建築家、はたまた思想家、デザイナー、構造家と言われ、様々な視点を持ったバックミンスター・フラー氏が設計したアメリカ館です。建築業界で知らない人はいないほど有名なこの建物は「ジオデシック・ドーム」と言われており、現在は「バイオスフェア」と呼ばれる博物館になっています。もう一つは「アビタ67」集合住宅です。モントリオール万国博覧会時代には、住宅計画が主要なテーマの一つであったため、その一環として建てられたのだそうです。

スタジオメンバーと記念写真

モントリオール大学における、約2週間に及ぶデザインスタジオも無事に最終日を迎えました。三つのグループが考えた串本町・通夜島におけるインフラフリーシステムの発表を聞いていると、それぞれから出たアイデアは、すべて独自性と豊かな創造力にあふれ優劣つけがたいものばかりだったため、僕はみんなに「A+]という評価をあげてしまいました。笑

インフラフリーという研究はまさに国境を超えていくことができる研究になり得ると、学生たちが強く感じてくれたことは、僕にはとてもうれしいことでした。そして、遠く離れた外国の学生たちが見た日本、描いた串本・通夜島へのデザインワークを、いつか地元の方々にも聞いてもらいたいと思っています。
ケベック市への旅&最新インフォメーション

先週末は大学が休みだったので、モントリオール大学の教授ロージェル先生とケベック州の首都であるケベックシティに行ってきました。先生によるとモントリオールが東京だとしたら、ケベックシティは京都にあたるところで、ケベック州の歴史を理解するためには必ず行くべき場所であるそうです。先生の熱い思いに誘われて、ケベックシティまで3時間かけた電車の旅をすることになりました。特急電車で3時間というのも、まさに東京から京都くらいですね。

ところで、カナダと言うと英語のイメージがあるかと思いますが、ケベック州はほとんどの人がフランス語をメインにして暮らしています。僕の目から見ると、カナダから独立した意識を持っていると感じるほど、自分達のルーツを大切にしている印象でした。町はフランスの建築物、料理はフランス料理、子供のころ住んでいたスイスのローザンヌの頃のことが懐かしく思い出されました。今は、フランス語を忘れかけているので、もうちょっとフランス語ができたらよかったな、と思いました。笑

上から見るケベックシティ

<最新インフォメーション>
今日は、お知らせを二つさせていただきます。

1:「宇宙エレベーター」が第6版の重版となりました!!
毎月多くの新刊が出版されていく中、こうして息の長い作品とさせていただけたことは、今まで応援して下さった皆さんのおかげです。ありがとうございます。そして、これからもよろしくお願い致します。
  
2:「Serkan College」を開催することになりました!!
今までは一回ごとの講演会ばかりでしたが、今年は定期的に学ぶ機会と仲間を作りたいと思い企画し、財団法人日本産業デザイン振興会様のご理解、東京ミッドタウン様のご協力を賜り、実施できることとなりました。 2009年5月29日から隔月で計6回、東京ミッドタウンにて行われます。80名限定の密度の高い通年講義がコンセプトであるため、受講に関しては書面による選抜方式となる予定です。詳細は順次、Serkan College HP にてアップされます。

また、それに伴いまして4月10日には「インテリジェント・デザイン」をテーマにした無料講演会およびSerkan College の説明会を以下の通り行う予定です。こちらの無料講演会にご参加下さり、その場でSerkan Collegeへのお申し込みをされた方には、受講を優先的にお受けするという大特典付きとなります!!(人数が多い場合、限定となります。)是非振るってご参加くださいませ。

【開催日時】 2009年4月10日(金) 18:00〜20:00
【会場】 東京ミッドタウン・タワー4F カンファレンスRoom1〜4
【定員】 先着200名様限定  【参加費】 無料  
詳細、応募フォームは下記Serkan College HPにございます。
http://www.serkancollege.jp/

「Serkan College」という新しいチャレンジをみなさんに応援していただければうれしいです。
カナダに着きました。

今週から、客員教授としてモントリオール大学に来ています。以前、カナダに来た時はバンクーバーに数日間滞在しただけだったのですが、今回はモントリオールに2週間滞在します。大学から徒歩5分の場所にキッチンのある広い部屋を用意してもらったので、快適に過ごせそうです。

学内のデジタル掲示板

初日、大学工学部の建物に入ったところで、デジタル掲示板に流れているインフラフリー研究の宣伝を見つけました。3月17日夕方から、客員教授による講演会が行われるのでその宣伝なのだそうです。今回の僕の講演題目は「インフラフリー建築が生み出す新たなオーケストレーション」です。一般の方も入れる講演会なので、できるだけわかりやすい内容で講演をしようと思っています。

僕がモントリオール大学で今回担当するのは「TRIPTYCH」と言われるデザインスタジオで、今年はカナダ人二人、外国人一人の教授(僕です)が呼ばれ、その教授が決めた課題に基づき学生が設計を行うという主旨になっています。参加者は6クレジット(単位)ももらえるので、結構人気な授業のようです。

串本町の「通夜島」の模型

スタジオにおける設計作業はトータル3週間かけて行われますが、客員教授は2週間しかいないことになっているため、最初の1週間は学生が自主的にスタジオの準備をし、設計に必要となる資料など集めることになっています。僕が決めた設計課題は「串本町」。必要な資料は事前に提供したこともあり、僕が行った日にはもう串本町の模模型は出来上がっていました。インフラフリー建築のコンセプトに基づいて、過疎化の進む串本町を無人島「通夜島」を利用し、どのように新しいライフスタイルや町作り、産業を作り出せるかを考えてもらう予定です。インフラの存在しない無人島で、インフラフリー研究を活かす画期的なアイデアが生まれる可能性に期待したいと思っています。経過はまた報告しますので、楽しみにしていて下さい。
卒業の時期
ここのところ研究関連で多忙でしたが、先週の後半は東京を離れて地方へ出向きました。

最初は名古屋です。2008年に僕の作品も展示された「バードハウスプロジェクト」の講演会に呼ばれました。2月頭に大阪で行われた同じ講演会には1000人以上が参加していましたが、今回もほとんど満席となっていました。バードハウスというプロジェクトを通して、みんなで未来の旅に出ることができて、とてもうれしく思っています。

仙台で記念写真

次は、名古屋から中部空港に行き、仙台へと向かいました。東北工業大学建築学科「公開審査会」の審査員として、午前中は講演会を行いインフラフリー研究を紹介し、午後は応募作品の中から優秀作品候補者の修士設計発表3人、4年生10人の発表を聞きました。「セルカン賞」は折り畳み可能な立て方、立方体構造の研究と開発で高さ2.1メートルの模型を発表した小檜山竜馬君に決定しました。おめでとう。

セルカン賞は小檜山君へ

翌日は、新潟三大学合同卒業設計展に呼ばれ新潟へ移動です。新潟県内から新潟大学、長岡造形大学、新潟工科大学の建築を専攻する学生が集まる合同講評会のゲストクリティークとして呼ばれています。学生が多様な視点からの作品のクリティークを受けることで、今後の活動の契機とすることを目的としている計画であり、中谷正人さん(建築ジャーナリスト)と松田達さん(建築家)らも参加していました。みんなで展示会場を巡回し、作者に対して直接作品の評価を行った上で、出展者から9名を選出、プレゼンテーションも受け僕らが評価をするといった仕組みです。

その次の日の午後からは、「地方都市・新潟のこれから」のシンポジウムに参加、僕は和歌山県串本町を中心で考えている郊外町の未来のあり方に関するインフラフリー研究の役割を簡単に紹介しました。新潟からの帰りはちょっと寄り道をして八海山まで行き、日本建築学会会長斉藤公男先生(日本大学名誉教授)の研究室の「Winter Camp」で一泊し、先生や学生達と楽しい時間を過ごしました。

新潟三大学合同卒業設計展のクリティーク

先週はあっという間に過ぎてしまいましたが、新しい人との出会いも多くて、建築づくしの一週間でした。僕自身も卒業設計の時に2キロの超高層ビルの設計を考えたことをなつかしく思い出しながら、やる気に満ちた学生の力に感動をしました。教員として、学生の目指す作品の方向性を高い視点から見つめ導くことができることはもちろん大切ですが、自分が学生だったときの気持ちも忘れずに向き合っていきたいと感じました。正直、最近僕も少し年をとったな、と思いつつ。笑
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