【ワシントン大治朋子】01年9月の米同時多発テロをきっかけに米国が始めたアフガニスタン戦争は7日、同年10月の開戦から、丸8年を迎えた。来春にはベトナム戦争を追い抜き、米国史上最長の戦争となる。7日、首都ワシントンでは全米27州から集まった市民約1000人が、反戦のメッセージを掲げ米軍撤退を求めた。
「我々は、偉大な伝統を続けているのだ」「キング牧師のように」。ワシントン中心部の大型施設に集まった市民は口々に、運動拡大の必要性を訴えた。グアンタナモ米海軍基地収容所の「テロ容疑者」をイメージさせるオレンジ色の囚人服。血まみれのアフガンの子供を描いたTシャツ。集まった市民はそれぞれのコスチュームで、戦争の惨禍を強調した。
米メディアによると、7日には全米各地で40件余りの反戦デモ行進などが行われた。全米25大学の学生組織も同日、各地でイベントを開催した。一方、イラク・アフガン戦争では一貫して増派の必要性を訴えてきた共和党のジョン・マケイン上院議員の地元、米西部アリゾナ州フェニックスでは、約50人がマケイン氏の事務所前で、「戦争は8年に及ぶ。もうたくさんだ」などと叫んだ。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、米国の戦争で最長は102カ月のベトナム戦争。これに18世紀の独立戦争(100カ月)、アフガン戦争(96カ月)、イラク戦争(80カ月)が続く。
AP通信などによる最新の世論調査によると、アフガン戦争を支持する人は今年7月に44%だったが、40%に下落している。
アフガンへの米軍増派をめぐる議論が高まる中、イラク戦争で息子を亡くした「反戦の母」、シンディ・シーハンさん(52)=米カリフォルニア州在住=が取材に応じ、「オバマ大統領は、アフガンから速やかに米軍を撤退させるべきだ」と訴えた。
シーハンさんはアフガンへの米軍のこれまでの増派で米兵や地元住民の被害が急増している事実を指摘。オバマ大統領のアフガン政策について「本当の変化をもたらすものではない。先制攻撃を是認したブッシュ大統領時代の路線と変わっていない」と厳しく批判した。
また、オバマ大統領がアフガン戦争について「選択の戦争」ではなく、「必要な戦争」と述べたことについて「(撤退という)選択の余地がある戦争なのに、戦争ありきで進めている。これがオバマ大統領の本質だ」と話した。
シーハンさんは5日、ホワイトハウス前に集まったイラク・アフガン戦争に反対する市民ら約500人と共にオバマ大統領に面会を要求。歩道を占拠しないよう求める警備当局の指示に従わなかったとして、市民ら数十人と共に逮捕された。その後釈放され、翌6日朝、再び数人の反戦運動家らと共にホワイトハウス前で「兵士を帰還させよ」と連呼した。シーハンさんは来年にもワシントン近郊に拠点を移し、反戦運動を活発化させるという。
シーハンさんは息子ケーシーさん(当時24歳)を04年4月、バグダッドでの戦闘で亡くした。その後、戦死した兵士の母親らと共に反戦活動を開始し、大規模な運動につながった。いったん活動を停止したが07年夏、当時のブッシュ大統領の弾劾を求めるとして、活動を再開。08年秋の米下院選に地元カリフォルニア州から出馬したが敗れた。
毎日新聞 2009年10月9日 東京朝刊