万葉集に詠まれた鞆(とも)の浦(広島県福山市)の埋め立て免許の差し止めを命じた広島地裁判決の記事にくぎ付けになった。県内でも景観と開発とのバランスを考え直すきっかけになると思うからだ。
広島地裁判決は、「景観利益」は法律上保護に値するとし、鞆の景観の価値を「国民の財産」と明示した。県内に目を移すと、「青垣」の山並みが美しい大和盆地を高架の道路が貫いている。京奈和自動車道を運転中、大和三山や葛城の山々に目を奪われそうになるが、よく考えると、その高架は地上からの風景を遮っている。
生活や経済活動に開発は必要だが、今後は、古都の景観への配慮が不十分な事業は許されないのではないか。(高瀬)
毎日新聞 2009年10月8日 地方版