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「カティンの森」:ワイダ監督「歴史伝える責任果たせた」

12月5日に公開される映画「カティンの森」の一場面=配給アルバトロス・フィルム、ニューセレクト提供
12月5日に公開される映画「カティンの森」の一場面=配給アルバトロス・フィルム、ニューセレクト提供

 【ワルシャワ中尾卓司】今年12月に日本で公開される映画「カティンの森」を制作した巨匠アンジェイ・ワイダ監督(83)が毎日新聞のインタビューに「歴史を伝える責任を果たせた」と語った。映画で描かれた「カチンの森事件」は第二次世界大戦中に起きたポーランド人将校の大量虐殺だが、旧ソ連軍の犯行だったことは長く隠され、今もポーランドとロシアの間でわだかまっている。監督の父も犠牲者で「両親の無念を知る私の使命だった」とも述べた。

 ワイダ監督は「灰とダイヤモンド」(1958年)などで知られるポーランド映画界の重鎮。

 監督は「カティンの森」について「過去の戦争を正しく伝えたかった。ソ連軍の犯罪が覆い隠され、ウソの歴史を押し付けられた」と話した。遺体が見つかったカチンの森の現場は旧ソ連領で、虐殺は40年春だった。しかし、監督は、ソ連側がナチス・ドイツの侵攻後の「41年」と虐殺の時期を偽るなど事実を隠したと指摘する。さらに、監督は「ソ連の影響下にあったポーランドで(民主化が実現した)89年まで映画を撮るどころか、事件を語ることもできなかった」と述べた。

 この作品にはワイダ監督の両親の姿が投影されている。ワイダ監督は「夫を戦場に送る女性の心情に焦点を当てた。死ぬまで夫の生還を信じ続けた母親の姿を間近に見てきたからだ」と説明した。

 39年夏、ポーランド軍大尉だった父親ヤコブさんが戦場に出発する朝、ワイダ監督の母親アニエラさんは夫の胸ポケットに、自分が身につけていた金属製の飾りを「お守りのように」入れた。当時13歳だった監督は70年後の今も、その時の両親の姿がまぶたに浮かぶと打ち明け、「けっして忘れられない場面だ」と語った。

 日本では今年12月5日、東京・岩波ホールを皮切りに劇場公開される。日本の観客に向けて、ワイダ監督は「虐殺された将校たちは歴史の事実を告発している。それを受け止めてほしい」と訴えた。

 ◇ことば・カチンの森事件

 第二次世界大戦中の1940年春、ポーランドを占領していたソ連(当時)がポーランド人2万人以上を虐殺した事件。虐殺されたのは、共産主義の政治教育受け入れを拒んだ将校、官僚、教師ら。ドイツ軍がソ連西部カチンで43年、大量の死体を発見し、発覚した。しかしロシア(ソ連)は実行した責任を90年まで正式に認めず、今も戦争犯罪だったとは認めていない。

毎日新聞 2009年10月7日 11時26分(最終更新 10月7日 11時44分)

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