新型インフルエンザの感染が県内でも広がっている。先月21~27日に県内76の定点医療機関から報告があったインフルエンザ患者数(季節性を含む)は1施設当たり2・28人と、流行基準の「1人」を上回った。学生の集団感染が確認された自治医科大が学園祭を中止するなど、その影響は大きい。
新型インフルエンザをめぐって、最近考えさせられることがあった。宇都宮市教委がインフルエンザによる休業措置を取った小中学校名を公表しないと決めた。一方、県教委は感染拡大を防ぐため、同市以外の学校名を公表している。
市教委は非公表の理由として、学校や子どもたちに対する「風評被害」を挙げた。市内で初めて感染者が確認された6月ごろ、学校名を公表したところ、「子どもたちが乗っているバスを調べてくれ」などという問い合わせが多く寄せられた。社会科見学を断られた例もあったという。
そういった過剰とも言える反応は残念でならない。「子どもを守るため」という市教委の主張もある程度理解できる。しかし、行政が持っている情報はできるだけ市民に開示するのが民主主義のルールだ。行政側が自己規制をかけてしまうことは、「情報隠し」につながる恐れがあると思う。
一方で、われわれ市民の側も冷静に対処することが必要だ。うがいや手洗いなどを心掛けていても、インフルエンザに感染する可能性はだれにでもある。感染した人に非があるかのような風潮は慎むべきだ。一人の記者としても、正確な情報をいち早く読者に伝えることで、無用な誤解や混乱を減らせるよう役に立ちたいと思う。(宇都宮支局)
毎日新聞 2009年10月7日 地方版