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【社会】

【関連】空自 イラク活動全面開示 米軍のための空輸、鮮明

2009年10月6日 朝刊

開示された「週間空輸実績」(右)と黒塗りのある過去の開示分

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 国連空輸のピークは要員交代の半年に一回、米兵空輸は年中無休−。防衛省が開示した「週間空輸実績」から航空自衛隊によるイラクでの空輸活動の全容が判明した。首都バグダッドへの定期便は、活動終了の十カ月前に週二便から三便に追加。終盤は「米軍のための空輸活動」となった。 

 「週間空輸実績」によると、空自のC130輸送機はクウェートのアリ・アルサレム基地を拠点に月曜日にバグダッド空港、水曜日にバグダッドを経由してイラク北部のアルビルへ行く国連のための定期便があり、ほかに週一日から三日、同南部のアリ基地へも飛行した。

 国連定期便を含め、ほとんどの便に米兵が搭乗。バグダッドや隣接するファルージャで武装勢力と戦っていた陸軍のほか、海軍、空軍、海兵隊も利用した。

 搭乗した多国籍軍は米軍(一万七千六百五十人)、豪州軍(八百六十六人)、韓国軍(百三十八人)、ポーランド軍(五十八人)、ルーマニア軍(二人)の順だ。ほかに「関係国軍人(十三人)」や米軍属、日本の外務省なども活用した。

 兵士が持ち込んだ小銃・拳銃は五千三百九十五丁で三人に二人は丸腰だったことになる。だが、米陸軍四十人が人数の二倍にあたる八十丁の小銃・拳銃を持って搭乗するなど、人数を上回る武器を持ち込むこともあった。

 イラク特措法に基づく実施要項には「武器・弾薬の輸送はしない」と明記されているが、武装兵の輸送は禁止しておらず、武器輸送の「抜け道」として「持ち込み」が行われた疑いがある。

 米軍物資は極めて少ないが、二回の空輸は「米軍貨物」「米軍木箱」と記録され、中身が分からないまま空輸。「犬」もあり、武装勢力の捜索に使った軍用犬とみられる。

 国連空輸は、二〇〇六年十月末から十一月初めにかけての二週間で二百四十三人がアルビルを往復。その後、半年ごとに大量搭乗があり、要員交代の足として利用したことが分かる。

 豪軍、韓国軍が撤収した後の〇八年三月、バグダッド便は月曜から水曜までの三日間に増えた。国連空輸のゼロが続くなかで、米兵は毎週二百人前後も搭乗し、米兵の大量輸送が常態化した。

◆政治に変化の兆し

 情報公開請求した近藤ゆり子さんの話 イラク空輸活動が情報公開され、昨年四月、名古屋高裁で認定された通り、(兵員輸送が多く)憲法違反が裏付けられた。イラク特措法に反対した政党が中心の政権となり、政治に変化の兆しを感じる。

◆派遣の総括求める

 名古屋イラク訴訟弁護団の川口創弁護士の話 イラク派兵の本質が米国などの軍事作戦の一環だったと判明した。鳩山政権には、小泉政権で進められたイラク戦争支持とイラク派兵の総括を求め、国際貢献=自衛隊の構図を改めるよう期待する。

 

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