防衛省が、情報公開法に基づき、これまで実質非公開としてきた航空自衛隊のイラク空輸支援活動を記録した「週間空輸実績」を請求者に全面開示した。5月までの5回の請求に対しては、週の輸送日数を除いて黒塗りの不開示で、日ごとの発着場所や輸送人数、武装装備の詳細が開示されたのは初めて。請求者の異議申し立てを受けて、9月の政権交代後に一転して全面開示された。
請求していたのは、イラク派遣差し止め訴訟の原告団の一人だった岐阜県大垣市の近藤ゆり子さん(60)。開示の決定は9月24日付で、北沢俊美防衛相名で「現時点で不開示とする理由がないことから、そのすべてを開示することとした」としている。
開示された文書は、06年7月から、空自が撤退した08年12月までの「週間空輸実績」(124週間分)で、C130輸送機で空輸した日付と、自衛隊や米軍、国連などの輸送人数の内訳、それぞれの小銃や拳銃の携行数などが記録されていた。米兵の輸送が全体の約7割を占めていた。
同省は7月、国会などに03〜08年度の運航実績について、月別や総計を報告。821回で、輸送人数は4万6479人、うち米軍が2万3727人だったなど大枠を公表していた。今回の開示された文書で、さらに細かな活動実態が明らかになった。
近藤さんは07年1月から請求を繰り返してきたが、同省は「公にした場合、他国部隊等の動向が把握され、関係諸国・関係機関との信頼関係を損なうおそれがある」などとして事実上の不開示を続けてきた。近藤さんは、撤退後の今年5月も同様の理由で不開示とした決定を不服とし、7月に異議を申し立てていた。
近藤さんは「派兵の検証・総括をするための最低限の情報が開示されたことは喜ばしい。政権交代による『チェンジ』の兆しを感じる」と評価している。
昨年4月に名古屋高裁でイラク派遣違憲判決を引き出した元原告代表の池住義憲さんは「米軍の兵士と物資を運んでいたという事実が、開示資料で裏付けられた。新政権には情報公開だけでなく、派遣活動を厳しく総括した上で、説明責任を果たして欲しい」と話している。