06年3月に自殺した北九州市若松区の市立青葉小5年、永井匠君(当時11歳)の両親が「原因は担任教諭の体罰」として、同市に約8100万円の損害賠償を求めた民事訴訟の判決が10月1日、福岡地裁小倉支部で言い渡される。「体罰はなかった」とする市側に対し、原告側は体罰を目撃したという級友たちの証言を証拠として提出しており、裁判所の判断が注目される。
永井君は06年3月16日午後3時半ごろ、掃除中に棒状に丸めた新聞紙を振り回し女子に当てたとして担任の女性教諭(54)=退職=にしかられ、直後に教室を飛び出して自宅で首をつった。
これまでの審理で、担任は叱責(しっせき)の際「胸元から肩付近を両手でつかみ、やや押した」と証言したが、体罰を否定した。北九州市教委は、永井君の死後に体調を崩し欠勤した担任にあてた児童の手紙11通を証拠申請し、採用された。「先生が永井君を注意したのは正しいこと」などの言葉が並んでいる。
一方、遺族は06年5月~08年9月、当時の同級生宅を訪ね歩き、叱責の状況を聞き取った陳述書6通を裁判所に提出。さらに08年3月、永井君の三回忌で再会した級友が16人分の目撃証言をまとめたノートも証拠採用された。
遺族はこうした証言を基に、担任が自殺当日に永井君の「胸ぐらをつかんで床に押し倒し、腕をねじり上げた。以前にも足をける、ほおをたたく体罰があった」と主張。市教委は「(担任にあてた)手紙は自殺直後に書かれており、時間が経過した原告側の証言より信ぴょう性が高い」と反論している。【朴鐘珠】
毎日新聞 2009年9月30日 西部夕刊