北朝鮮に住む被爆者を撮ったドキュメンタリー映画「ヒロシマ・ピョンヤン」(伊藤孝司監督)を見た。3歳の時に広島で被爆した女性(67)は、原爆の後障害に苦しんでいるが、被爆者としての援護を何ら受けることができない。映画のサブタイトル「棄(す)てられた被爆者」が、北朝鮮で暮らす被爆者の実態を突きつけている。
北朝鮮では約8割の被爆者がすでに亡くなり、生存者は382人という。高齢化が進んでいるのは、日本と変わるはずもない。
広島や長崎で被爆した後、日本国外で居住するようになった在外被爆者の援護は長い歳月を経て一定の前進をみた。被爆者健康手帳を持っていれば、国外にいても医療費の支給などの援護を受けることができるようになった。在外公館で手帳の申請もできる。だが北朝鮮の被爆者は、韓国の被爆者と異なり、国交がないとして戦後64年たっても放置されたままである。
実は、好転の兆しをみせた時期もあった。2001年3月、政府は外務省・厚生労働省による合同調査団を北朝鮮に派遣し、928人の生存被爆者を確認している。「国と国との問題ではなく、被爆者はどこにいても被爆者」。当時の坂口力・厚労相はそう発言し、医療支援が期待されたが、今に至るまで何もなされていない。
そこで鳩山内閣の出番であろう。ミスター年金の長妻昭・厚労相の担当になる。難問が山積している同省とはいえ、ここは長妻氏に北朝鮮に行ってほしい。在朝被爆者の人道的援護が目的ではあるが、日朝間の閉鎖状況を打破するきっかけになるのではなかろうか。もちろん、その先には拉致や核の問題がある。
毎日新聞 2009年10月4日 0時05分
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