「地方分権どころか、ひどい中央集権国家じゃないか」。八ッ場ダム建設推進派の県議の発言にうなずかされた。私自身は、中止か否かの結論を出せていないが、鳩山政権の姿勢には違和感を感じるからだ。
民主党は地域主権の理念を掲げ、衆院選で勝利した。硬直化した国と地方の関係を変えてくれると期待していたが、八ッ場ダム問題ではがっかりさせられた。
民主党は建設中止をマニフェストに盛り込むにあたって、地元の声をほとんど聞いていない。前原誠司国土交通相がようやく現地を訪れたが、下流で最多の事業費を負担している埼玉県には、いまだに説明や代案の提示はないという。
「国が決めたことに地方は黙って従え」というのでは、今までと何も変わらない。最終的な結論はどうなるにせよ、しっかりとした対話が不可欠だ。【岸本悠】
毎日新聞 2009年10月1日 地方版