近藤流・健康川柳

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近藤流健康川柳:9月の月間賞 伸び切った輪ゴムの中にいる余生

 ◇大賞

 伸び切った輪ゴムの中にいる余生 広島・三次市 錦武志(9月24日掲載)

 ◇佳作(未掲載句から)

 老老で姉妹みたいになる母娘(ははこ) 大阪・都島区  吉田エミ子

 今日もまた医者を育てに医者通い    大阪・門真市  和泉雄幸

 里帰りした時だけは子にかえり     奈良・生駒市  チャーブ、カホチチ

 何十年過ぎても青春ビートルズ     京都・福知山市 中嶋和男

 投票所なつかしの道幼稚園       大阪狭山市   池もろこ

 誰にでも笑顔をみせていやがられ    東大阪市    塚本皓一

 多弁して無言に劣ることを知る     奈良・桜井市  福田良清

 辛(つら)い日も過ぎれば同じ一日か  大阪・城東区  塩見悦子

 母旅路家は野となり山となり      兵庫・姫路市  くみこ

 適当に忘れてくれる人でいい      奈良・宇陀市  牧野文子

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 ◇物に託して詠む

 心のありようは表現しにくい。そこへ一つの物を持ってくる。物に託せば、心の中のもやもやしたものばかりか、人生観や死生観だって表現できる。以前、事物をして語らしめよ、と書いたが、「人プラス物」の組み合わせは表現力を一段とアップしてくれる。

 9月の月間大賞「伸び切った輪ゴムの中にいる余生」は、輪ゴムが秀逸だ。しかも伸び切ったという形容がいい。表現しにくい余生が実感できて、そうだなあとうなずけた。

 この句にぼくは自分がはいているパンツ(下着)のゴムひもを思い浮かべた。洗濯して使い古しているのが多く、大半がゆるい。もともとやせているので、ずれ落ちそうになるものもある。といって新しいパンツは苦手だ。ゴムひもがきつくて、はいていてしんどい。ゆるくて、そう、伸び切ったゴムひものほうが体になじむ、と思いはじめて何年もたつ。

 残された人生はそのゆるいゴムひもの中にある、と思いつつ、先の句を味わった。

 9月は7歳の子の作品にも感心した。南あわじ市の「ピカチュウ」さんで、「じいちゃんのあくびに何かほっとする」と詠む。生活情景が浮かんでくるようだ。じいちゃん、健康でいてくださいよ。(専門編集委員・近藤勝重)

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 ◇作品を募集~

 はがきで未発表3句まで。住所、氏名、電話番号を明記し〒530-8251(住所不要)毎日新聞「健康川柳」係へ。MBSラジオ番組「しあわせの五・七・五」(土曜午前5時15~45分)への秀句も掲載します。

毎日新聞 2009年10月1日 大阪朝刊

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近藤流・健康川柳 アーカイブ

10月2日「明日休み!」この瞬間が最高よ
10月1日肩で風切ったあいつも腰を曲げ
9月の月間賞 伸び切った輪ゴムの中にいる余生
9月30日じいちゃんのあくびに何かほっとする
9月29日夫には「ハイ」と素直にまだいえぬ
9月28日今日生きた証のような仕舞風呂
9月27日ウソでしょう!老母と同年森光子
9月26日ばあちゃんは孫にほめられ涙ぐむ
9月25日松茸は待つだけだけと妻笑い
9月24日伸び切った輪ゴムの中にいる余生
9月23日にこにこと返事してるが聞いてない
9月22日嫌だった白髪も今は大切に
9月21日たまにはと言っていつでも食べる母
9月20日鈴つけて楽しくなった車椅子
9月19日プロポーズ思い出させる虫の声
9月18日何事もなかったように夜が明ける
9月16日もう知らん言ってるけれど気にしてる
9月15日歳とると老いることとは違うよう
9月14日しあわせな時が今だと気づかない
9月13日久しぶりジャンプしてみる水溜(たま)り
9月12日いい人はいい人つれて来てくれる
9月11日穂が揺れる行っておいでとゆるやかに
9月10日旅終えて我が家の茶漬け疲れ取る
9月9日リハビリで夫婦のスキンシップ増え
9月8日冷戦の親善大使孫が来た
9月7日退屈は頑張り生きた褒美だと
9月6日人に言え自分に言えぬ「気にするな」
9月5日初孫のほっぺにキッス乳の味
9月4日黙ってる方が理解を得ることも
9月3日物言わぬ花に一番励まされ
8月の月間賞 「有難う」「ごめんね」他人にいえるのに
 

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