3年前、東京の病院前に、アパートの立ち退きを迫られたおじいちゃんが座っていた。行き場がなくなり、路上に出たらしい。ぐったりしていたので病院スタッフが気遣い、複数の福祉事務所に電話した。でも、「担当地区でない」などと拒まれ、困っていた。結局、病院で1泊し、最寄りの福祉事務所が見つかった。生活保護を申請し、介護施設に入居したと後で聞いた。
「身寄りも年金もない虚弱な高齢者の住める場所が足りない」。路上生活者らを対象に東京都墨田区で宿泊所を運営していた斉藤瞬さん(66)は言う。施設不足の現状は3年前と変わらない。区は、今年3月、火事で死者を出した群馬県の無届け施設にも生活保護受給者を送り出していた。斉藤さんは区のケースワーカーから病気がちな受給者について相談を度々受けていたという。
斉藤さんは友人と生活保護受給者の新施設を準備中だ。子どもの通学路の見守りなどで生きがいを感じてもらい、入居者の自立を促す。それには彼らを受け入れる地域の温かい目も必要になる。【大和田香織】
毎日新聞 2009年9月29日 15時26分