事件・事故・裁判

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

混合診療訴訟:原告が逆転敗訴 東京高裁

混合診療訴訟の控訴審判決で原告敗訴の判決を受け弁護士と共に会見する原告の清郷伸人さん(右から2人目)=東京・霞が関の司法記者クラブで2009年9月29日午後3時9分、須賀川理撮影
混合診療訴訟の控訴審判決で原告敗訴の判決を受け弁護士と共に会見する原告の清郷伸人さん(右から2人目)=東京・霞が関の司法記者クラブで2009年9月29日午後3時9分、須賀川理撮影

 保険診療と保険外診療(自由診療)を併用する「混合診療」を受けると、本来は健康保険が適用される診療も含めて治療費全額が自己負担となる厚生労働省の運用の妥当性が争われた訴訟の控訴審で、東京高裁=大谷禎男(よしお)裁判長=は29日、「運用は妥当」と判断した。その上で、原告に保険給付を受ける権利を認めた1審判決を取り消し、請求を棄却する逆転敗訴を言い渡した。原告側は上告する方針。

 国は混合診療を原則禁止している。1審は「運用に法的根拠はなく違法」と判断したが、2審は国の政策を追認した。

 訴えていたのは、神奈川県藤沢市の団体職員、清郷伸人(きよさと・のぶひと)さん(62)。腎臓がんを患い、01年2月から保険適用のインターフェロン療法を受け、その後、保険適用外の療法を併用した。このため、治療費全額を自己負担すべきだとされ、06年3月、国を相手に保険適用の確認を求めて提訴した。

 控訴審では、84年の健康保険法改正で混合診療を一部認める例外規定が盛り込まれたことを巡る法解釈が最大の争点だった。判決は「認められたもの以外の混合診療は禁止されていると解釈すべきだ」と指摘し、国の運用を妥当と認めた。清郷さんは「患者が希望する治療を選択する権利を奪い、憲法が保障する生存権などを侵害している」とも主張したが、「医療の安全性確保などから、合理性を欠くとは言えない」と退けた。

 1審・東京地裁は07年11月、「保険診療と自由診療を一体として判断すべき法的根拠は見いだせない。保険が適用されるかどうかは個別の診療行為ごとに判断すべきだ」として、厚労省の法解釈は誤りと指摘していた。【伊藤一郎】

 ◇「命の限り闘う」

 清郷さんは判決後、記者会見し「控訴審は1審と違い、厳しい雰囲気だった。失望した」と悔しさをにじませた。闘病生活は9年目。「がんや難病の患者の命を危機にさらし、治る可能性は遠のく。命がある限り闘い続ける」と声を振り絞った。

毎日新聞 2009年9月29日 21時12分(最終更新 9月29日 23時53分)

事件・事故・裁判 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド