衆院選が終わり、政権が交代した。私にとっては知事の国政転身騒動に始まり、宮崎1区の保守分裂選取材に明け暮れた夏だった。
振り返ると、知事は自民党に求めた地方分権の条件が受け入れられずに立候補を断念した形だが、世論を読み違え、予想以上の逆風に身動きが取れなくなったように見えた。「地方から国を変える」との思いが本気だったのなら、反対を振り切ってでも立候補すべきだったと、今でも思う。一連の言動への批判にしばらくはご傷心の様子だったが、最近では冗談も復活。だが、信頼回復には、理想とする地方自治の実現にまい進するしかない。
そして1区。元国土交通相の中山成彬氏は不出馬を撤回して立候補を強行した。「民主党政権を誕生させてはならない」と豪語したが、最初から最後まで、配慮に欠けた言動で周囲を振り回した揚げ句の落選だった。
自民大敗に終わった選挙では、政治家の言葉の重みと結果責任が問われたと思う。2、3区では議席を守ったが、東九州自動車道整備の遅れや農家の疲弊は、長年の自民支配の結果だ。二大政党制で政権を監視する健全な野党からの再興に期待したい。
私と言えば「祭り」の余韻に浸る間もなく、政策転換が地方に与える影響、国会と県議会の与野党逆転--などの県政取材が続く。何を取材し、報じるか。記者も問われている。【石田宗久】
毎日新聞 2009年9月29日 地方版