こどもアサヒ

紙飛行機に夢をのせて
タイから参加 難民の少年が活躍

 思い思いのかたちに折った紙飛行機を室内でどれくらい長く飛ばせるかを競う「全日本折り紙ヒコーキ大会」が今月中旬、千葉市の幕張メッセで開かれ、約1300人が参加しました。ミャンマーからの難民で、タイ北部チェンマイの小学校に通うモン・トンディーくん(12歳)が団体戦でみごと優勝。個人戦でも小学生の部3位に入賞しました。

 

全日本折り紙ヒコーキ大会に1300人
国籍がなく支援受けて来日「恩返しできた」
モン・トンディーくん(12歳)
団体戦V 小学生の部3位

 大会は2年に1度開かれ、今年で4回目。全国5か所で行われる予選を勝ち抜いた42組(126人)と、当日参加した約1200人が集まりました。折り紙飛行機競技がさかんなタイからも、モンくんら5人が参加しました。

団体戦で優勝し、記念品の紙飛行機と賞状を持つモンくん=写真はどちらも、千葉市の幕張メッセで

 モンくんは去年の8月、タイ予選の小学生の部で12秒50のタイムで優勝。しかし、モンくんの両親はミャンマーから逃れてきた難民のため国籍がなく、海外旅行をするときに必要なパスポートをとることができませんでした。「日本の空にぼくの紙飛行機を飛ばしたい」とうったえるモンくんを、地元のテレビや新聞が伝えて支援が広がりました。今月3日、タイのアピシット首相と直接会い、特別に日本へ行く許可をもらうことができました。

 3人1組で戦う団体戦には、インタチョートさん(26歳)、プラサートさん(34歳)とともに出場。「力いっぱい高く飛ばすことだけを心がけた」というモンくんは、前かがみの姿勢から思いっきり背中をそらせ、真上に放りました。全員が9秒以上飛ばし優勝しました。

 個人戦は、3〜5回投げて1番良い成績が結果となります。モンくんはおしくも準決勝で敗退しますが、3位決定戦で10秒53飛ばして3位に入賞。ほっとした表情で「力を出しきりました。ここまで助けてくれた人に恩返しができたと思います」と話しました。

 紙飛行機との出あいは3年前。自然と友だちの間ではやり始めたそうです。夢中で飛ばす子どもたちを見た小学校の先生が、腕のふり方や体重のかけ方など教えました。タイ予選で優勝した後は、毎日約2時間、何度も折っては飛ばすことをくりかえしました。また、ジョギングや体操など、体力づくりもしてきました。

 モンくんの通う小学校には、ミャンマーの軍事政権から逃れてきた少数民族の子どもたちが多く通い、80人の児童のうち半数以上がタイの国籍を持っていません。日本行きが決まって、友だちから「ぼくたちの分までがんばってきて」とはげまされたそうです。

 学校の近くから飛び立つ飛行機を見るのが好きというモンくんの夢は、パイロットになることです。「空高く舞い上がり、いつか世界中をとびまわりたい」と話していました。

世代を超えて人気 
折り方を工夫する楽しさ 家族で挑戦も

おおぜいの小学生がタイムを競いました

 1枚の紙を折ってつくる紙飛行機。はさみやのりは使わずに、ものさしなどでつばさの大きさなどを調整しながらよく飛ぶように工夫します。年齢を問わず楽しむことができ、予選には小学校入学前の子どもから65歳以上のお年よりまで約1000人が参加。そのうち小学生は約500人でした。

 大会を主催した日本折り紙ヒコーキ協会(広島県福山市)は、「折り方によって飛び方が変わるのがおもしろさです。上達の早い子は、教室に通ったり本で基本を学んだりしていますよ」と話します。個人戦でモンくんに勝ち12秒03飛ばして優勝した神奈川県秦野市の安田旭来くん(四年)は、「友だちに紙飛行機を紹介して、学校の休み時間に飛ばして遊んでいます」といいます。

 会長の戸田拓夫さんは、国際宇宙ステーションで折り紙飛行機の実験をした若田光一宇宙飛行士に折り方を教えました。

 室内滞空時間の世界記録(24秒91)をもつ戸田さんは、「大人にとって紙飛行機は、小さいころに遊んだなつかしい遊び。家族で始める人も多く、参加者も年々増えています。いつか世界で競える大会に育てたいですね」と話していました。

朝日小学生新聞 2009年9月29日付


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