細菌「カンピロバクター」による食中毒対策で、内閣府食品安全委員会は、鶏肉で生食の割合を減らせば食中毒の危険性が大幅に減るとの報告書案を公表した。カンピロバクターが依然として食中毒の大きな原因で、5世帯に1世帯が自宅で生食にしているとの実態を踏まえ、注意喚起した。
カンピロバクターは、鶏や牛、豚などの家畜の腸管内などに生息している。07年にはこの菌による食中毒が全国で416件発生した。患者数は2396人で、同年の食中毒のうち最も多く、鶏肉が最大の原因とされる。腹痛や発熱が主な症状だ。
食品安全委は、家庭や飲食店で調理され食べられている鶏肉の量などから、食中毒のリスクを分析。その結果、国内ではこの菌の感染者のうち、80%は生食が原因で、生食の人は年平均3・42回感染していると推定した。また、インターネットを使った調査では19・5%の家庭が自宅で生食をしていると回答した。
そこで、食品安全委は発症リスクを減らす方法として生食を避けることを提言した。殺菌効果のある塩素水の適正利用など農場や食肉処理過程での対策によって予防効果が高まると指摘した。同時に、菌に汚染された鶏肉を区別して生産、処理、流通させるシステムの開発も重要と強調している。【江口一】
毎日新聞 2009年5月29日 東京朝刊