September 29, 2009

真夜中のカイロ

カイロのシェラトンホテルに到着。
チェックインを済ませホテル内の
「リムジンサービス」へ。

「ピラミッドを背景に写真が撮れるところに行きたい」というと
270エジプシアンパウンドだという。
米ドルで54ドルぐらい。
車は三菱ランサーとのこと。

空港からのメルセデスベンツEクラスが160エジプシアン
だからこの料金は高い気がしたが、一流ホテルのお抱え車だけに
安心を買うつもりで決断。

私と連れの米国人の若者は深夜12時半にホテルの車でピラミッド
ツアーに出かけた。

カイロの町は真夜中なのにまるで真昼間のような活気。
小さな子供まで外で遊んでいる。

ただ夜の暗さに蛍光灯色の中の賑わいは異様な雰囲気をかもし出している。

アメリカの中で特にアラビック人口が多いミシガン州で育った米国人の若者は子供の頃からクラスメートをはじめ多くのアラビア人と身近に接してきた
という。

私が行ったテキサスの学校にも何人かいたが、
私自身が「ラマダン」などを目前にすることはなかった。

若者は「あれはインチキだよ」と言い出した。

ラマダンは太陽が出ている間の絶食。
若者の解説だと、夜中に活気づいているのは
彼らが昼と夜を逆さまにした生活をしているのだという。
昼間、太陽が出ている間に眠って、太陽が沈んでから
行動を開始する。

「それなら絶食も辛くないだろうけど、それはインチキ
だよね」とのこと。

これまでの人生で一度も見たことのない異様な光景…。

異様な光景はしばらく続き、ホテルを出てから45分ぐらいして
変な部落のようなところで車が止まった。
30前後のような一人の男が近づいてくると
運転手はすぐに外に出て握手。
我々にも降りろとの仕草。
運転手はまったく英語ができない。

近づいてきた男は「俺はこの運転手の
長年の友達だ」というと馬に乗った部下のような若者が
何人かやってきた。
彼らは山賊だ。

「ここからピラミッドが見えるところに行くには馬からくだに
乗っていくしか方法がない」といい
我々を無理やり馬に乗せる。

力ずくで乗せられたわけではないが、
精神的な圧力をかけるのがうまい。
連れの若者も運転手も馬にまたがる。
私は拒否したが「カモン」と圧力をかけてくる。

私も馬にまたがったが5mぐらい歩いたところで
「俺は馬に乗れない。帰る」と主張。

山賊のリーダーは「それなら馬車を用意する」と
部下に馬車をもってこさせた。
私を馬車にのせて「いま俺がお前に要求するのは
笑顔をみせることだ」と言い出す。
緊張してこわばっている顔を見てとったようだ。

Egypt


結局若者は馬にまたがり私は馬車の運転手と2人で馬車に乗り、
深夜ツアーに出発。ほとんど真っ暗なところも何度か通過し、
馬で山を登っていく。

その間、何度か馬に乗った軍団…5頭から7頭ぐらいの軍団が
猛スピードですれ違っていく。

雪はないがスノーモービルのような形をした乗り物に乗った
集団も土煙をあげながらすれ違う。

「あいつら、襲ってこなければいいが…」と不安でいっぱい。
山賊のリーダーは「持ち物に気をつけろ。ここで無くしたら
二度と出てこない」としばしば同じことを言う。

「ここで死んだとしても誰にも発見されない」

当初の話では片道15分の往復30分ということだったが
真っ赤な嘘。実際には3倍の時間が経過した。

他の山賊チームが馬やモービルで何度もすれ違う。

「持ち物に気をつけろ。ここで無くしたら
二度と出てこない」

とっくに気をつけている。
巧みな心理作戦…。

極度の緊張の中、頂上に到着。
真っ暗だ。写真なんか撮れる明るさじゃない。

我々が連れてこられたのは光が当てられている
表のピラミッドではなく「裏のピラミッド」だった。

「政府は午後3時以降のピラミッド観光を禁止している。
警察の目に触れずにピラミッドを見るのは裏道しかない」
との説明。

しかしながら真っ暗。

山賊のリーダーは言った。

From here,you can see the pyramids by hart.

写真を撮るのが目的なのにこれでは意味がない。
しかし変な雰囲気にもっていきたくない。
命が優先。ここから生きて帰るのが優先だ。

アメリカ人の連れはやけに明るくふるまっている。

まったくの暗がりの中で写真を撮って
「これは素晴らしい写真だ。ありがとう」などと
山賊のリーダーの機嫌をとっている。
DSCN0102


実際にフォトショップを使って修正してもこの暗さ…。

私も「素晴らしい」を連発。

とにかく帰りたい。

そして山を下り始める。

「持ち物に気をつけろ。ここで無くしたら
二度と出てこない」

「ここで死んだとしても誰にも発見されない」

山を下りながら何度も神頼み…。

「生きて帰りたい」

結局なんとか山賊のアジトに戻った。

そして言ってきた。

「金を出せ」

「いくらだ?」

「有り金全部とは言わない。
馬車代が1200、馬が3頭だったが1頭600、
合計で3000だ」

ないと言えば身包みはがされるのは間違いない。

米ドルで550ドルは…命の引き換えなら高くない。

素直に支払った。

「ありがとう。素晴らしいツアーだったよ」と
明るくふるまって、やっと車に乗りホテルに向かう。

許せないのはこんなところに連れてきた運転手である。
しかし命拾いしてよかった。

(続く)













jimmysuzukiusa at 07:59│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!

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