鳩山政権が発足して1週間。書きたい話は山ほどあるが、「政権交代で政治報道も変わる」と言っている私としては、やはりこの話に触れないわけにはいかない。事務次官らの記者会見禁止問題だ。
新聞・テレビが一斉に批判し、鳩山由紀夫首相も既に軌道修正しているが、どうも民主党側もメディア側も「そもそも記者会見とは何か」という基本的な議論が欠けている気がしてならないのだ。
国民が知りたい話、知るべき情報を記者が引き出す。それが記者会見だ。その点、民主党は自分たちの考えを一方的に伝えるのが会見だと勘違いしている節がある。都合のいい情報を提供するのは広報・宣伝。会見とは違う。
しかも、政治主導といっても閣僚や副大臣らが省庁のすべての情報を把握するのは不可能だ。そこまで国民は求めていないし、あやふやな説明をされて困るのは国民だ。会見では、政治家が役人言葉でなく分かりやすく説明する一方で、専門性のある官僚も同席して時に補足もする。それが政権にも国民にもより望ましい方法ではないか。
一方、新聞・テレビも「元に戻せ」と要求するだけでは済まない時代だと思う。例えば従来どこまで定例の事務次官会見を私たちは生かしてきただろう。突っ込んだ質問をせずに官の情報を垂れ流し、官の代弁をしてきただけではなかったか。「知る権利」を主張するだけでなく、自ら反省してみるいい機会だ。
まず、最近記者の一部に見られるように会見場でひたすらパソコンを打って発言録作りだけを目指すなんてまねはやめよう。質問することをはなから考えずに臨んでいるとすれば、これも勘違いというべきなのだ。
毎日新聞 2009年9月24日 0時11分
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