鳩山政権の発足から23日で1週間が経過した。事務次官会議の廃止▽閣僚委員会での政策調整▽政務三役会議による省庁運営--など「脱官僚・政治主導」の政策決定システムを始動させたが、民主党が野党時代に検討していた省庁幹部の更迭など官僚機構との全面対決は回避。内閣官房のスタッフの大半を前政権から引き継ぐなど、政権移行の混乱を最小限に抑えようと「軟着陸」の構えを取っている。【田中成之】
「民意に沿った政治を行う第一歩をヨチヨチ歩きで始めた姿を皆さんにも認めていただき、皆さんの優れた才能を国民のために十分発揮してほしい」
鳩山由紀夫首相は18日、首相官邸に各省事務次官を集めてこう訓示した。「政治主導」への絶対服従ではなく、あくまで協力を求める低姿勢に徹した内容。16日の初閣議で決まった内閣の基本方針にも「官僚諸君にも、共に改革に取り組み、国家を支える中枢としての誇りを取り戻してほしい」との融和的な表現が盛り込まれた。
衆院選前、民主党内で検討された「脱官僚」の具体策の中には、(1)局長級以上の官僚に辞表提出を求め、政権への「忠誠」を誓った者だけを再登用する(2)全閣僚が官邸で執務する(3)国会議員が首相秘書官を務める--など、従来の「政・官」関係を激変させる案が含まれていた。しかし、政権スタート時点では見送られ、首相秘書官には従来通り財務、外務、経済産業、警察の4省庁から官僚が起用された。各閣僚も所管省庁で執務中だ。
このほか、官僚組織のトップとなる事務の官房副長官には滝野欣弥前総務事務次官を充てる慣例踏襲の人事を行い、その下の官房副長官補3人を含む内閣官房のスタッフの大半は前政権のまま。衆院選前の6月に、民主党が打ち出した農業者戸別所得補償制度を「現実的でない」と批判した井出道雄農水事務次官も、赤松広隆農相が「『献身的に支える』と(次官から)話があった。過去は過去として力を合わせてやる」と不問に付した。
ただ、こうした対応は政権移行期の暫定措置との見方もある。副大臣の一人は「前政権までの枠組みを実際に動かしてみて、どこに不具合が出てくるか確かめている段階。法律を改正しないと変えられないことも多く、今後、変えるべきは変える」と話している。
毎日新聞 2009年9月24日 東京朝刊