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逃げまどう登山客、突進するクマ…行楽の乗鞍岳パニック

2009年9月19日23時50分

図:クマに襲われた現場再現図拡大クマに襲われた現場再現図

写真:射殺されたクマ=19日午後6時6分、岐阜県高山市丹生川町の畳平駐車場、中沢一議撮影射殺されたクマ=19日午後6時6分、岐阜県高山市丹生川町の畳平駐車場、中沢一議撮影

写真:クマが入り込んだ乗鞍バスターミナル=19日午後5時58分、岐阜県高山市丹生川町、本社ヘリから、岩下毅撮影クマが入り込んだ乗鞍バスターミナル=19日午後5時58分、岐阜県高山市丹生川町、本社ヘリから、岩下毅撮影

写真:魔王岳(奥)から下りてきたクマは乗鞍バスターミナル(手前中央)に入り込んだ=19日午後5時37分、岐阜県高山市丹生川町、本社ヘリから、岩下毅撮影魔王岳(奥)から下りてきたクマは乗鞍バスターミナル(手前中央)に入り込んだ=19日午後5時37分、岐阜県高山市丹生川町、本社ヘリから、岩下毅撮影

 行楽客でにぎわう岐阜・乗鞍で、そのとき何が起こったのか。複数の目撃証言をもとに再現すると――。

 午後2時20分ごろ。クマは魔王岳中腹の小高い場所から、突然、現れた。転げ落ちるようにして、岳に通じる石の階段まで走り下りてきた。

 そこには、まさに今から登ろうとする男性がいた。長い木の棒でクマを追い払おうとする男性。クマともみ合いになった。「きゃー」「やめてー」。女性の叫び声が響く。クマは男性を駐車場に押し倒した。顔や体を何度もはたいた。男性は自力で起きあがれないようだった。

 駐車場には、バスやタクシーが十数台とまっていた。威嚇のため、それぞれがクラクションを鳴らした。効果はない。襲われた男性を助けようとしたロッジ「銀嶺(ぎんれい)荘」やバスターミナルの従業員たちが、次々と襲われた。腕をひっかかれたり、顔を払われたり。逃げた人たちを追って、クマは駐車場内の小屋に入った。

 小屋に逃げた人たちは、窓から外へ。出入り口をトラックがふさぎ、クマをいったんは閉じこめたかのように見えた。が、クマは窓ガラスを割って飛び出した。今度はターミナルビルに向かって、突進していった。

 ビルの職員は、とっさにシャッターを下ろそうとした。間に合わず、約50センチのすき間が残った。クマはそこから潜り込んだ。1階には、逃げ込んでいた行楽客ら30〜40人がいた。「わーっ」。騒然となった。

 次々と襲われた。土産物店にいた女性も腕などをかまれた。消火器を振り回して抵抗する人も。従業員の指示で行楽客らは上階に向かった。

 一部は2階からはしごを伝って屋外に逃げた。残る人たちは2階の屋根裏に入り、内側から机などでバリケードを作った。15分ほどたった。「1階のクマはバリアーで押さえたので、急いで外に逃げてください」。従業員がそう告げに来た。順番に階段で1階まで下りた。

 「バリアー」は土産物店の格子状シャッターのことで、それで店の一角に閉じ込めたクマの辺りを避け、避難用バスに乗り込んだ。上空のヘリコプターの音が響いていた。

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