誰もが知っている東大寺の大仏殿。しかしその天井裏に、長さ約23メートルもの巨大な2本のはり「虹梁(こうりょう)」があるのを知っている人は少ないだろう。世界最大級の木造建築の屋根を、落慶法要から300年となる今も支え続けている。
江戸時代に再建された時、宮崎県で見つかった松の巨木。奈良まで運搬するため、数え切れない人たちが木を載せた車を引いたという話を聞いた。彼らを動かしていたのはきっとお金やモノではなく、大仏様のために、という「思い」だったのだろう。
目に見えない思いの結晶が、人目につかない場所で生き続ける大仏殿。「目に見えるモノのためだけに動いてはいないか」。と問い掛けられた気がした。(花澤)
毎日新聞 2009年9月19日 地方版