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 取材協力:福岡秀興(ふくおか・ひでおき)氏 子どもと食べものTOP


体重増加はどこまで?


厚生労働省では、若い女性の痩せ傾向や食生活の問題、低出生体重児の増加といった状況を踏まえて、今年の2月、「妊娠期における望ましい体重増加量」について、やせている人の場合は9〜12kg、ふつうの人なら7〜12kg、肥満の場合には個別に対応という目安を発表しました(表1)。
体重増加は個人差が大きいため、食事量や運動量なども配慮することが大切であるという見解も示しています。

表1「妊娠期における望ましい体重増加」
体格区分(非妊娠時) 推奨体重増加量
低体重(やせ):BMI 18.5未満 9〜12kg
ふつう:BMI 18.5以上25.0未満 7〜12kg(※1)
低体重(やせ):BMI 25.0以上 個別対応(※2)

(※1)体格区分が「ふつう」の場合、BMIが「低体重(やせ)」に近い場合には推奨体重増加量の上限側に近い範囲を。「肥満」に近い場合には推奨体重増加量の下限側に近い範囲を推奨することが望ましい。

(※2)BMIが25.0をやや超える程度の場合は、およそ5kgを目安とし、著しく超える場合には、他のリスク等を考慮しながら、臨床的な状況を踏まえ、個別に対応していく。

資料:妊産婦のための食生活指針(厚生労働省)



今までの「どんな人も7〜10kg」という目安に比べると、どちらかといえば「このくらいは体重を増やしましょう」という方向の指導であり、個人差も考慮した内容となっていますが、それだけに「これまでの厳しい体重管理は何だったのか」といった声も聞こえてきそうです。また、基準が変わったとはいえ、「○〜○kg」という数字が提示されていることに変わりはなく、体重の増加度だけで妊娠中の健康がチェックできるわけでもありません。やはり、体重はあくまで参考と考え、妊娠全期を通して、適切でバランスのよい食生活を送ることこそが大切、といえます。

というのも、体重を気にしすぎると、「先月は食べ過ぎて体重が増えてしまったから、今月は粗食でダイエット」といったことになりかねません。このような発想は、妊娠中は非常に危険です。赤ちゃんの体の中の臓器が、どの時期にどのような発達をするのか、影響をもっとも受けやすい時期はいつかなどについては、まだまだ分かっていないことがたくさんあります。

もし、ダイエットをした時期が、臓器の発達にとって決定的な時期だったとしたら、赤ちゃんの体に重大な影響を与えかねないのです。

福岡秀興(ふくおか・ひでおき)氏
プロフィール

兵庫県出身。医学博士。東京大学大学院医学系研究科発達医科学助教授。米国内分泌学会・骨代謝学会正会員。日本内分泌学会代議員。
産婦人科生殖内分泌学の視点より、妊娠中や思春期の女性の骨代謝の研究を行っている。第6次、第7次日本人の栄養所要量の策定委員。


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正しい食事は赤ちゃんへの最高のプレゼント


では、何をどのくらい食べていれば、赤ちゃんに十分な栄養を与えることができるのでしょうか。これについては、まず、胎児へ栄養を供給する胎盤について知る必要があります。哺乳類の胎盤はさまざまで、豚や羊の場合、母親と胎児の血流を分ける細胞層は四層もあります。人の胎盤は二層です。基本的には、出産時の胎盤の重さと赤ちゃんの出生児の体重には相関関係があります。ただし、重さは必ずしもその質を決定するものではなく、胎盤が大きいのに生まれた赤ちゃんは小さいという例外もあります。

妊娠中は、母体がきちんと栄養をとらなくてはいけません。具体的に何をどれだけ食べればよいかは、厚労省から「妊産婦のための食生活指針」の策定に伴って公表された「妊産婦のための食事バランスガイド」が参考になるでしょう。

この中では、まず、1.主食でエネルギーををしっかり補う 2.不足しがちなビタミン・ミネラルを緑黄色野菜でたっぷりとる 3.たんぱく質の供給源となる肉や魚、大豆、卵は適量をとる、といった基本的なことが大切だとされています。1については、妊娠中はおなかの赤ちゃんの分もエネルギーが必要となるため、体重の変化も考慮しながらも、基本的には妊娠初期(16週未満)は50kcal、中期(16週〜28週未満)は250kcal、後期(28週以降)は500kcalの増量が必要だとしています。そのうえで、エネルギーは脂肪からではなく、炭水化物(ごはん、パン、麺など)を中心に得ることが大切だと述べられています。特に、たんぱく質が含まれながらも脂質が少なく、さまざまな料理と調和する「ごはん」を勧めています。
ごはんを主食にすると、2の「野菜をたっぷり」、3の「肉、魚、大豆、卵を適量」という条件を満たすことも容易になるでしょう。また、和食中心の食生活を送っていれば、不足しがちな亜鉛、セレン、銅なども自然に摂取しやすくなります。

なお、先天奇形である二分脊椎症を防ぐためには、ビタミンBの一種である葉酸を、妊娠初期にたっぷりとることが必要だと言われていますが、本来、葉酸も和食中心の食生活であれば無理なく摂れる栄養素です。以前の日本では、二分脊椎症が欧米に比べて2分の1〜10分の1と頻度が低かったのも、和食のおかげだと言われていました。ところが、最近では二分脊椎症が増加していることが分かり、葉酸が注目されるところとなったのです。つわりがかなりひどく、妊娠初期に十分な栄養がとれない場合などは、サプリメントを用いる方法もありますが、そうでなければ、できるだけ食事で、葉酸も含めた各種栄養素を摂るのが理想的です。しかし、葉酸に関しては充分に摂れない場合は、サプリメントで摂ることも心がけましょう。

逆に、妊娠中にあまり食べてはいけないものとして、メチル水銀の濃度が高い魚が上げられていますが、だからといって魚を極端に控えるのもよくありません。魚類は、良質なたんぱく質や、脳の発達や血流の促進に効果があるといわれるEPA、DHAなどの高度不飽和脂肪酸を多く含むほか、カルシウムやビタミンDをはじめとする栄養素の重要な摂取源でもあります。魚介類の中でも、食物連鎖を通じて水銀濃度が高いキンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロなどは、週に1回、80g程度に留める、といった工夫をし、ふだんの食生活には、むしろ魚介類は適量を積極的に取り入れたほうがいいでしょう。

なお、どんなにパーフェクトな栄養バランスで食卓を調えたとしても、その栄養がすべて体に吸収されるとは限りません。取り入れる栄養のことだけを考えるのではなく、胃腸の消化吸収力を高め、食べたものを母体と胎児の体に役立つものに変えられる体にしておくことも大切です。また、ストレスは胃腸の機能にダイレクトな影響を及ぼしますので、いつも安定した心持ちでいられるよう、生活環境を整えることも大事なことといえるでしょう。

<参考>妊産婦のための食生活指針(厚生労働省)


第2回:胎児が危ない!危険な妊婦のダイエット
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