09.09.18
(金)
フェアトレード雑貨に、萌えてもいいですか
それは今年4月、代々木公園で開催された「アースデイ」に、ぶらりと遊びに行った時のこと。問題意識を持って、とかでもなく、目当てはフリーコンサートだった。見終わってからは、ものすごく沢山出ている、出店を回った。「アース」という大きな括りのせいか、多ジャンルの店が出ていたのだが、ふと、とあるテントの小物に、目が釘付けになった。
か、かわいい……!!
個人的に、どストライクゾーンの雑貨発見。ポップには「手縫いの刺繍です」と書いてあった。手縫い刺繍! こんなにみっしり!?
いろんな色のパターンがあって、選ぶのに悩んだ。そしてひとつだけ、買った。
suicaと、名刺を入れとくのに、ものすごく便利なサイズ。もちろんチャックを閉めたままでピッと出来ます。しかも丈夫。(でもこれはサンプル品のテスト販売だったそうで、このサイズは今はないとのこと)
買う時、「このタグの、SALLY ANNって何ですか? ブランド名ですか?」ときくと、
「いえ、これを作ってる団体なんですよ」と言われた。
団体…?
帰宅してから、「SALLY ANN」と検索してみたのだが、どこかの人名がひっかかるばかりで、雑貨は見つけられなかった。
他にも商品あったら買いたいのにな、そう思いながらも、諦めかけていた時。
『地球のココロ』編集部に「それ、ウチで何度か取材させて頂いている、シャプラニールというNGO団体が扱ってる商品ですよ」と教えてもらった。
まじすか。意外と世間は狭い!
■フェアトレード雑貨ってなんだ
大喜びで、シャプラニールのサイトを見た。
そこで初めて「SALLY ANN」がフェアトレード雑貨なんだ、ということを知った。
フェアトレードとは、ざっくり説明すると、
・発展途上国の、社会的・経済的に立場が弱い人(女の人など)に仕事の機会をつくり、
・フェアなギャラを支払い、彼らが自立出来るように支援する
・出来上がった商品は、NGO(非営利団体)が買う人に橋渡し。一般企業と違って利益第一ではない
ので、働く人に、より多くギャラが支払われる
こういったシステム。
これで、貧しい農村や、スラムで暮らす人など、不当な低賃金で働く人を、減らせるというわけだ。
正直に言うと、「フェアトレード」という言葉が、苦手だった。
社会貢献するのがイヤだというわけじゃない。例えば、あんまり可愛くない商品があったとして、「好みじゃないけど、ボランティアで買うぞー」というのは、違う気がしていたのだ。
作った人がいて、それに惚れて、欲しくなって、買う。どこの国のどんな人が生産者でも、生産者と対等でいたい。そんなふうに、思っていたのだが。
だから「SALLY ANN」との出会いは、衝撃だった。
きっと大変な生活をしているであろう、遠い国の女性が縫った雑貨が、ものすごく可愛いという事実。
それを、日本の東京に住んでいる自分が、眺めてニヤニヤしたりしている。
不思議な感じがする。
「SALLY ANN」のことがもっと知りたくて、シャプラニールの植田貴子さんに、お話を聞きに伺った。
■バングラディシュの女性が、家事の合間に縫っている「SALLY ANN」
私は知識ゼロで「可愛い」ってだけで買ってしまったんですが、実際に購買される人は、どういった方が多いんでしょう。
「シャプラニールは市民による会員組織で、商品カタログを4万部ほど発行しているのですが、数十年も会員だという方は、貧困のため、と問題意識を持って買ってるかたが多いです。
ネットショップもあるんですが、そこではフェアトレード商品とは知らず、デザインがいいから買うっていう方が多く、最近増えてますね」
サリー・アンはそもそも、どういう方が作っているんですか?
「バングラデシュの南東部に、ジョソールという所があるんですが、そこにサリー・アンの事務所があるんです。
サリー・アンが支給した布と糸で、現地の女性が、家事の合間に、家畜を育てながら、子供を育てながら、家で刺繍しているんです。
刺繍が終わったら、事務所に集めて、ミシンの技術のある人が縫製をする、という形ですね」
この刺繍は、伝統的な柄なんですか?
「もともとジョソールにあった柄だそうです。ベンガル語でマコーシャール・ジャールと言うんですけれど、『蜘蛛の巣』という名前です」
え、てっきりお花模様なのかと思っていました…。蜘蛛でもいいんですが。
作業途中の刺繍。確かに、蜘蛛の巣を作るように、縫われています。
これを日本人が可愛いと思ってるってことを、バングラディシュの方々は、どのくらい把握されてるんでしょうか。
「想像つかないでしょうね。日本からバングラディシュを知ることは、情報集めが容易ですが、バングラディシュの人にとって日本は、行ったことも見たこともない国ですし、文化も違いますし。
そこでシャプラニールのような団体が、どういうものがウケるのか、提案してやりとりしながら、商品を作っていくわけです」
なるほど。それにしても、洗練されたデザインですよね。
「サリー・アンはもともと、ノルウェーのサルベーションアーミー(救世軍)が立ち上げた団体なんです。手工芸品の盛んなジョソールで、何かやれないかと。だから最初は、北欧向けの商品を作っていたんです。いまも9割の商品は北欧に輸出してるそうです」
蜘蛛の巣柄以外の商品もあります。これは地元の足、リクシャーの刺繍入りのエプロン。可愛い。
そう言われれば、北欧のデザインを通過した雰囲気もしますが…そうなのかな。
このカラーリングは、バングラディシュの方々の、衣服のカラフルさに、通じるところがある気がするんですが。
「そうですね、バングラディシュの色彩感覚は、鮮やかなんですよね。
例えばこの刺繍ですが、黄色のピンクって派手過ぎ無いかな? って思ってしまうんですが…」
仕上がったものを見ると、上品ですよね。
派手なのに、違和感なく洗練された色の組み合わせ。
「日本人にはなかなか発想出来ない色を、組み合わせてくるんですよね。
シャプラニールの場合は、彼女たちが考えた色の組み合わせの中から、選んで、大きさや形をカスタマイズして、より日本向けのものを提案していく、っていう感じです」
いやでもこれ、これにぐっとくる人、多いと思うんです。欲しい人、多いと思います。
「そうだったら嬉しいですけれど、ものすごく沢山作れるものでもないので…」
あ、そうか。むずかしいですね…。
実はバングラディシュの首都、ダッカには、サリー・アンのショップがあるのだそうだ。すごく行きたい。でも遠過ぎる。いつか行ける日はあるのだろうか。
……日本で雑貨が流行っているのは、女性が、ストレスでいっぱいになってるからなんじゃないかなと、思うことがある。
女性は雑貨屋に走る。可愛いもの、美しいものを眺めて、手にとって、いつも側に置いて、自分をなぐさめる。誰のためでもなく、自分のために、わりと大金を払ってでも、雑貨を愛でる。
遠い国の、知らない女性が手で一針一針縫った、雑貨の編み目を見て、癒される。
サリー・アンを買って、背景を知ることで、普通の大量生産の雑貨を買った時より、『ドキドキ感』が増した。妄想かもしれないけれど、生産者と両思いになれたような気持ちになってしまった。
誰かの生活と自分の生活がつながる、ということ。
ああ、やっぱり不思議な感じがする。
これからもサリー・アンを追っかけていきたい。
そして別の、激可愛いフェアトレード雑貨との出会いも、あったらいいなと思う。
シャプラニールは今、秋冬のカタログを配布中(サリー・アンほか、15の団体の商品を掲載)。
ネットから、無料で請求出来ます。
>>「シャプラニールカタログ資料請求」
ネットショップも。
>>「クラフトリンク南風」
シャプラニール事務所、併設ショップでも購入可能です。
住所:〒169-8611東京都新宿区西早稲田2-3-1早稲田奉仕園内
電話:03-3202-7863
営業時間:火曜日から土曜日までの10-18時。 日曜・月曜・祝日休
http://www.shaplaneer.org/
大塚 幸代(おおつかゆきよ) |
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