しかし、出版業界の尻すぼみはほぼ確実な中で、この収益構造が次世代を約束する保証はどこにもない。では、どうするか。方策は二つ。
第一に、今あるコンテンツを電子化し、ケータイや、将来は電子ブックの形でキンドル(アマゾン)などに載せるという道だ。角川もすでに取り組んでおり「ケータイ向けのマンガのコンテンツが月次ベースで黒字化した」(佐藤辰男・角川グループホールディングス社長)という。
他の多くの出版社も探る道だが、問題点がある。コンテンツの供給業者は利益率が低いという点だ。ネットビジネスではプラットフォーマーに利益が集中する傾向がある。たとえば、iPodにおけるアップル、キンドルにおけるアマゾンの存在だ。占有率が高く、コンテンツの提供側よりも、明らかにプラットフォーマーのほうが力が強い。
他のプラットフォームにコンテンツを載せるビジネスを“他力型”と呼ぶなら、自らフロンティアを切り開くのが“自力型”。これが第二の道。角川が力を注ごうとしているのが、この第二の道、自力型である。
自力型といっても、自らがプラットフォームを作るのではなく、一つのコンテンツを複数メディアに展開する。マルチコンテンツ化することで収益の最大化を図るのだ。このマルチコンテンツ化で、角川はすでに一頭地を抜いている。
象徴的な例が、03年に角川スニーカー文庫から発売された『涼宮ハルヒの憂鬱』だ。大ヒットの後にシリーズ化され、さらにコミック、テレビアニメ、DVD、ゲームソフトへ展開。派生タイトルは動画サイトユーチューブに配信、DVD販売までつながった。DVDは米国でも販売され8万枚を売り上げた。09年4月には、「涼宮ハルヒの弦奏」と銘打ち、東京フィルハーモニー交響楽団によるクラシックコンサートまで開催され成功を収めている。
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