山口県上関町で原子力発電所建設計画を進める中国電力は10日、海域の埋め立て工事に着手する予定だったが、反対活動を続けている予定地対岸の同町祝島の島民らが漁船を使って実力で阻止し、同県平生町の海上でにらみ合いが続いている。
この日の作業は、海域の作業区域を明示するため、沖合に灯浮標(ブイ)を設置する予定だった。上関町隣の平生町の田名埠頭(ふとう)からブイ2基をクレーン台船に積み、予定地まで海上約12キロを運ぶ段取りだったが、午前6時から祝島の漁船約30隻が田名埠頭に集結。同7時半ごろに現れた台船が埠頭に近付くのを阻んだ。
漁船は「上関原発 絶対反対」の旗を立て、中電は拡声機を使って作業への協力を求め、説得を続けた。また、埠頭に置かれているブイから約100メートル離れた敷地境界のフェンス沿いには、女性を中心に約70人が座りこみ、「きれいな海を汚すな」「中電は帰りなさい」と声を上げた。祝島で農業をしている伊藤冨美子さん(80)は「反対運動を緩めたら、原発が簡単にできてしまう。足が立つうちは反対運動に来る」と話した。【近藤聡司、内田久光、丹下友紀子】
毎日新聞 2009年9月10日 西部夕刊