先月下旬に父が77歳で亡くなった。がん治療で入退院を繰り返していたが、亡くなる4日前に見舞いに行くと、コーヒーをおいしそうに飲み、身内の悪口を話すと止まらない。「(余命は)1週間」との病院の見立てに首をかしげざるを得なかった。
その週末、息を引き取る30分前に病室に着くと、意識はなかった。声をかけて肩を揺すると大きないびきをして、呼吸を再開する。繰り返すうちに反応がなくなり、医師が臨終を告げた。6年前に亡くなった母と同じ病院と火葬場を経て、父は骨つぼに収まった。
生前、両親は死後はおろか、介護施設や緩和ケアの話にも強い拒否感を示した。口にするだけで不都合なことが起きると思っており、対策そのものが許されなかった。結果的に二人とも、希望通りの終わりを迎えた。語弊は承知だが、感謝したい。【内田達也】
毎日新聞 2009年9月17日 地方版