だが、中曽根康弘元首相に「ソフトクリーム」と酷評されたこともある鳩山氏は、まだ気概を見せていない。自民党の初代総裁・鳩山一郎元首相の孫だが、由紀夫氏は政治家としてはあまりに上品すぎる印象がある。それが小沢氏の援護を必要とする一因にもなっている。

 小沢氏は今や党の財布を握っている。民主党の地滑り的勝利によって、小沢氏は大きな勢力を得た。大勢の新人議員が、小沢氏のおかげで当選できた。政治ニューズレター「インサイドライン」編集長の歳川隆雄氏によれば、小沢氏は140人あまりの「小沢チルドレン」を完全に掌握している。これはかつて田中派が最大規模だった時とほぼ肩を並べる数字だ。

 もし壊し屋が本来の姿に戻れば、その圧倒的な影の力をもってして、政府を弱体化させることもできるのだ。

真の革命:今までと違う日本

 しかし、小沢氏の権力は、恐らくは認識の問題だろう。鳩山氏が内閣主導の政府で明朗な政治プロセスの実施を試みれば、その光の下で小沢氏の闇の力も衰えるかもしれない。それに民主党の新人議員の全員が小沢氏に恩義を感じているわけでもない。民主党は公式には派閥を認めていない。

 ただ、小沢氏のことを、目的達成のためには手段を選ばない革命者と捉えておくことも、有益だろう。実際、自民党を破壊することも、日本を「普通の国」にする、つまり自らの運命を決められる国にするという同氏の一貫した目標を実現するための1つの手段にすぎなかったのかもしれない。

 20年近く前から小沢氏が主張してきたのは、日本の外交政策は敗戦以来の対米従属の上に成り立っており、すべてを、特に防衛を安価に済ませたいという願望によって形作られてきたということだ。

 日本は将来、国益が米国と相違した時には独自の道を進まなければならず、全世界へ武力展開しようとする米国への協力を拒み、国連主導の任務にのみ参加するようにすべきであると、同氏は述べている。そして何よりも、日本はアジアの裏庭における地位確立に集中すべきだという。

 鳩山氏も共有するこうした見解は、反米的なものではない。だが、数多くの前提の根拠を揺るがすものだ。例えば、小沢氏が丸くなり、その影響力も衰えていくとする思い込みもその1つだし、新政権はどれだけ切迫していようと、外交政策より国内政策を優先するだろうといった見通しもそうだ。

 安保体制が常態的に続くものと期待している米国人は、この点に注意しておかなければならない。

© 2009 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBpressがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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