(英エコノミスト誌 2009年9月12日号)
日本の新首相が警戒すべき相手は、野党ばかりではない。
8月30日に行われた総選挙で民主党が重大な勝利を収める前であれば、存命の政治家で日本の政治に最も大きな影響を与えた人物という栄誉はやはり、2001年から2006年まで首相として強烈な存在感を示した小泉純一郎氏に与えられていたかもしれない。
あの日以降となると、海外の多くの人は、その栄誉を9月16日に首相となる鳩山由紀夫氏に与えるかもしれない。
しかし実際のところ、民主党の地滑り的勝利を陰で組織的に支えた小沢一郎氏こそがその栄誉に相応しいとする根拠は、覆し難いほど強力だ。
国内外を問わず、小泉氏の知名度は民主党の2人より高い。同氏の巧妙な技は、自ら率いる自民党のために働いている時でさえ、党と戦っているように見せることだった。
だが小泉氏は大部分において、自民党の派閥が政治決断を独占してきた――近年では、政治決断を麻痺させてきた――戦後体制を壊すと謳った構想に対して、リップサービスしか払ってこなかった。
今になって振り返ってみれば、小泉氏は破壊の時を遅らせただけだった。その破壊を先日ついにやってのけたのが、若い議員候補を選抜して育て、自民党の大物にぶつけて落選させた小沢氏だった。今、自民党は滅亡の危機に瀕している。
半開きの目の下の黒ずんだたるみが放埒なワシを思わせる小沢氏は、20年近くも前からこの体制の破壊を追い求めてきた。「壊し屋」と呼ばれる小沢氏は1993年、同じ派閥のメンバーとともに自民党を飛び出し、自民党が史上初めて政権を失うきっかけを作った。
その時は、自民党は11カ月後に政権に返り咲いた。だが、今回のダメージはもっと長く尾を引きそうだ。
冷戦の終結後、小沢氏は1955年に始まった「自民党体制」が既にその目的を終えたことを認識した。小沢氏は一貫して、政権競争は2大政党の政策選択を巡って行われるべきであって、政治家の人となりや利権によって左右されるべきではないと主張してきた。この目標において、小沢氏は日本の政界きってのブレない政治家だろう。
しかし、現在67歳の小沢氏が歩んできた40年間の政治的キャリアの中には、ほかにも一貫したところがある。
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