「2009年 政権交代」

2009年 政権交代

2009年9月15日(火)

移民受け入れ、是非を論ずる段階ではない

対談「新政権で日本はどう変わるか」(下)

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 ただし、それとは別に、移民を入れた時に起きる摩擦をなくす方法を考える必要がある。そこは「オール・オア・ナッシング」ではなくて、どういう形で、どういうスピードで、最終的には日本人として処遇していくのかということです。

 なぜかというと、アジア共同体を目標に掲げるというのなら、今の欧州連合(EU)みたいに相当、行き来が自由になりますからね。移民を含めた人の出入りに対して、考え方を変えなければならない。

 今すぐ、そうなるわけではなく、10年、20年、50年といったスパンで、変わることなので、今のうちに頭を切り換えておくということです。実際、日本人の切り換えって速くて、中国やアジアからのお嫁さんなんてもういっぱいいるわけですよ。あとはどう、みんなが納得するように戦略を組んでいくかです。

 これは民主党と自民党が政策で競争すべきですね。どっちかが「絶対だめ」と言うよりは、「こうした方がいい」という継続の方向で具体策を探るのが正しい。

移民の労働者が支える世界的な名産品

 竹中 そこで育ったアジアの若者がそのまま移民として日本に住んで、次の農業を担っていったっていいと思う。そういう大胆な、戦略やビジョンを国家戦略局から打ち出してほしい。安心と安全だけじゃなくて、成長と変革を兼ね備えた民主党の1つのコアになると思いますよ。

 渡部 竹中さんの話を聞いていると、(米カリフォルニアの高級ワイン産地)ナパバレーを思い出しますね。

 ワインナリーのマネジャーをやっている友達がいて、しばらく滞在したことがあります。ブドウ畑には、メキシコから来たと思われる人しかいない。だけども畑を回っているマネージャークラスは白人。

 そこにある全米で最も洗練されたレストランでは、いっぱいおいしいワインを出してくれる。多くの観光客が来て、ワインは世界中に輸出されている。移民の労働者が支えているんですね。

 竹中 ただ、米国の場合、非合法でメキシコから来た人が多いことが問題です。そして、低賃金で働いた結果、米国の農業を支える労働者として不可欠になっている。それはそれで問題があるわけです。

 移民問題は、欧州など多くの先進国で抱えていて、移民を増やせば解決するという単純なものではない。とはいえ、きちんと取り組んでいかないと、世界から取り残されてしまうと思いますね。

 だから日本ではまず、旅行ビザで来てそのまま非合法で働いている人をなくす。法律で間口を広げればいい。そのまま日本に住んでもらって、税金も年金もきちんと納めてもらって、医療保険もつくようにしてあげる。そういう政策的な取り組みが必要です。

東京に集中しているのは最大のリスク

 渡部 もちろん、移民はあくまでオプションの1つです。

 民主党が打ち出した子供手当も人口を増やす総合政策の一部です。税金をいじって子供を産むインセンティブを与えるというのは、方向としては正しい。多角的に攻めるべきで、こっちが良くて、こっちがだめという話ではない。

 農業や地方の話に戻ると、日本の場合、都市部の人口集中がやっぱり問題なんですよ。集中しているから東京の生産性が高いなんて言いますが、地方がどんどん弱っていくのは決していいことではない。

 私は安全保障のプロだから言いますけど、機能が東京に集中していることは最大のリスクです。経済の面でもそうでしょう。

 なぜ小泉内閣で進んでいた首都機能移転の話が止まったのか、誰が止めたのか、誰も検証しない。東京を解体しろと言っているわけではなくて、首都機能を分散させたりしてリスク分散しないと、直下型地震でも、テロでも、やられた時に大変な損害を被ります。

 人口とか民間企業の機能も分散しておけばリスクは小さくなる。それによって、実は地方で公共事業をよこせとか言っている人たちの不満が収まるわけです。それは、民間事業が来るからです。

 そういう発想をしないと、日本も持続的な発展はできないでしょう。ある程度の大きさの国ならば、地方にそれぞれ自立できる力があって、うまく分散しています。田中角栄・元首相流に言えば、「国土の均衡ある発展」ですよ。

米国べったりは正しい、ただし発想の転換を

 竹中 渡部さんの専門分野では、日米関係の行方が気になります。民主党政権下で、どんな変化が起こるのでしょうか。





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このコラムについて

2009年 政権交代

 衆院議員選挙の結果、民主党が新政権を発足させることが確実となった。民主党が衆院の第1党となるのは1996年の結党以来、初めてのことだ。民意による初の政権交代は現実のものとなった。
 新政権のもとで日本はどのように変わっていくのか。また、2度目の野党転落となった自民党は今後、どう巻き返しを図っていくのか。

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