「2009年 政権交代」

2009年 政権交代

2009年9月15日(火)

移民受け入れ、是非を論ずる段階ではない

対談「新政権で日本はどう変わるか」(下)

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 渡部 日米関係に関しては、それこそ、不安に思っている人は米国にも多いし、日本にも多いでしょう。それはそうです。今までの自民党政権は米国べったりだったわけですから。

 ただ、こういう言い方はあまりしたくないのだけれど、理屈から言うと、日本は米国べったりであるべきなんですよ。安全保障上ね。

 どういうことかというと、日本は憲法第9条によって、必要最小限の防衛力しか持てない。安全を守るためには米国の軍事力に頼るしかないわけです。だから、べったりになるように、作ってある。それを否定するつもりはありません。

 ただし、自民党政権は長かったから、ものを見る「頭の構造」がそれを前提にするようになってしまった。何が起こるかというと、冷戦の時、あるいはイラク戦争を始めるまでの圧倒的な力を持つ米国を所与のものとして考えてしまうんですね。

 ところが、今は米国の力が相対的に落ちてきて、軍事的な脆弱性は増している。それを念頭に置いて米国と話さなければいけません。中国と話す時もそうです。

 先月、東京財団がホスト役になって、米国の右派のイデオローグとして有名なニュート・ギングリッチ元下院議長に日本に来てもらいました。

 彼の一番の関心事は何かというと、中国とインドの経済力が相対的に大きくなる中で、逆に規模が縮小する日本と米国はどう生きるのかということです。この課題を真剣に考えるためにも、米国の優位性を所与のものとして考えちゃいけないんですね。

 日本の安全保障の前提として、米国との同盟関係を守ることは当然ですが、発想の転換をしくてはいけない。米国との調整だけをすればいいのではなく、米国と組んで何をすべきか考えなければならない。

 そんなことを言うと、たぶん自民党の人は「民主党なんて反米だろ」と言うでしょう。これ、実は面白い。なぜかというと、米国と対等な関係を持って考えたら「反米」という反応が来ること自体、日本人としては大変恥ずかしい。

 そういう発想に染まった人たちの頭を刺激するのには、民主党政権というのはいいきっかけになるんだろうと思います。

55年体制のトラウマから放たれるべき

 渡部 誤解されたくなんですけれども、米国と同盟関係を維持するのが日本にとって望ましいし、アジアの安定にもいいとは思っています。

 例えば、日米関係を牽制している中国だって、「じゃあ、今、日米同盟をやめる」と言い出したら、「頼むから今はやめないでくれ」と言うと思いますよ。そのくらい日米安保は世界の安定要因なんですね。

 確かに55年体制の社会主義陣営にくみしていた人たちは、日本と米国が何かしら安全保障の協力をしたり、憲法第9条の解釈にちょっと触れただけで「軍国化する」って、大騒ぎしていた。

 そのトラウマが自民党支持者の人たちにある。そろそろ、この55年体制の右と左の極端なところは排して、もう少し真ん中で、それこそゴルディロックスを考える段階なのでしょう。

 実は米国にとっても、コストが大変なんです。景気刺激や金融再生などに使ってしまって、お金がないんですよ。しかも今度、医療保険も米国で創設するということになれば、米国だって軍事費をまかなうのは大変なんです。





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このコラムについて

2009年 政権交代

 衆院議員選挙の結果、民主党が新政権を発足させることが確実となった。民主党が衆院の第1党となるのは1996年の結党以来、初めてのことだ。民意による初の政権交代は現実のものとなった。
 新政権のもとで日本はどのように変わっていくのか。また、2度目の野党転落となった自民党は今後、どう巻き返しを図っていくのか。

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