身内だけで葬儀を済ませたり、葬儀をしない人が増えている。後で知人の訃報(ふほう)に触れた時、香典はどうしたらいいのか。そもそも周りの人たちは、どんな故人にどのくらい包んでいるのか。民間の調査から浮かぶ最近の香典事情は--。【中村美奈子】
冠婚葬祭の互助会「くらしの友」(東京都大田区)が香典に関する調査を約3年ぶりにまとめた。08年12月末から09年1月、関東地方に住む20~60代の男性給与所得者計1000人を対象にインターネットで実施した。
どんな関係の人が亡くなった時いくら香典を出すかの質問で、最も多かった回答は別表の通り。06年2月の前回調査と大きく変わったのは、両親への額が2倍になった点だ。
平均額でみると「両親」は前回より3000円増え、「祖父母・おじ・おば」は1000円減った。60代では友人とのつきあいに出費を惜しまない傾向がみられた。
訃報を後日知った時、香典を「持参する」人は54・8%、「郵送する」が17・8%。「何もしない」は50代以上で増え、60代では前回比7ポイント増の25%に。
調査結果について、同社総合企画部の仲山正巳部長は「家族だけの葬儀が一般化し、会葬者が減っている。その分内輪で葬儀代を支えなければならず、親への香典の額が上がったのではないか。後から知っても香典を送らない人が増えたのは、遺族の意向を尊重するようになったためだろう」と話す。
ちなみに香典返しでありがたかったものは「なし」(36・6%)が前回同様トップだ。
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また同社は7月、団塊世代(1947~49年生まれ)の男性の葬儀観も5年ぶりに調査した(関東地方の400人が回答)。希望する自分の葬儀の形式として、1位は親類、友人までが参列する「身内葬」で前回(04年9月)と同じだが、妻と子が参列する「家族葬」が、会社関係者まで集まる従来型の「参列葬」を抜いて2位に。「参列葬」は14・3%も減った。
自分らしさをどこに出すか(複数回答)では、1位が宗教性のない自由なスタイルによる会場設営、2位がしのぶ会や献花、散骨などで、それぞれ増えた。あの世に持って行きたい物を一つだけ自由回答で聞くと、最も多かったのは「パソコン」(10%)だった。
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■香典の額で最も多かった回答(「くらしの友」調査より)
両親 10万円
きょうだい 5万円
祖父母・おじ・おば 1万円
上司・同僚・部下とその両親・配偶者 5000円
元上司・元同僚 5000円
親しい友人・知人 1万円
親しい友人・知人の両親・配偶者 5000円
隣近所 5000円
毎日新聞 2009年9月13日 東京朝刊