2009年6月19日1時0分
建設効果が費用に見合わないとして、国土交通省が3月末に建設を凍結した国道18路線について、大半は事業が再開される見通しとなった。同省が18日開いた専門家による第三者委員会「事業評価監視委員会」で、高知、愛媛、沖縄県の5路線の建設再開を認めた。残る路線も月内に判断する。凍結継続は1〜2路線にとどまる見通しだ。
5路線のうち2路線は四国地方整備局(高松市)、3路線は沖縄総合事務局開発建設部(那覇市)が管理する。委員会は地方整備局が委嘱した学者や経済人らで構成され、それぞれの地元で別々に開かれた。国交省は、5路線で計277億円の事業費を削減する案を示した。
沖縄県の「国道329号与那原(よなばる)バイパス」と「国道329号南風原(はえばる)バイパス」は、設計見直しで事業費を19〜25%削減する。委員会はコスト削減を評価し、建設再開は可能と判断した。
一方、高知県と愛媛県を結ぶ「国道440号地芳(じよし)道路」など3路線は、コスト削減だけでは、時間短縮など経済効果と事業費を比較した結果があらかじめ定めた基準に達しなかった。しかし、委員会は「事業を再開しなければ失われる経済効果」が「残る整備費」を上回るとし、医療や防災、観光振興の効果、地元の要望などの事情を加味して、再開を容認した。
凍結18路線を巡っては、地元自治体などが「経済効果だけで決めないで欲しい」と猛反発。自民党道路調査会も5日、金子国交相に凍結解除を求める決議書を提出し、金子国交相も「なるべく早く解除できるようにしたい」と応じた。総選挙を控え、公共事業積み増しを求める声が強く、国交省が示した費用対効果の基準はさっそくなし崩しになり、道路建設への歯止めは外れた形だ。
委員会が認めたことで判断は国交省に任される。18路線については、09年度当初予算の段階で約200億円が盛り込まれている。国交省は近く、停止していた予算の執行を再開する。(津阪直樹)