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民主党は政権交代後に、「天下り」や「非効率な事業運営」が問題視される独立行政法人の抜本的な見直し作業を本格化させる。通則法の改正などで独法の「埋蔵金」を回収し、新たな財源を確保する方針で、公務員制度改革の一環として天下り先となっている独法の「解体」を図る狙いもある。だが、独法の廃止や事業縮小は行政サービスの低下につながる恐れもあり、見直しには重い政治決断が必要になりそうだ。【平地修】
民主党は多数の官僚OBが天下りする独法を「無駄の温床」として批判。不要事業を廃止するなど「独法のあり方は全廃を含め抜本的な見直しを行う」としている。99法人の資産と負債の差に当たる純資産は計24・4兆円で、このほとんどを政府による出資金が占めている。独法を廃止して資産と負債を整理した場合、超過資産に相当する純資産の大半は国に戻すことができる。
ただ、財務省などには慎重な見方が強い。例えば、純資産額が6・4兆円と最も大きい「日本高速道路保有・債務返済機構」。資産の大半が高速道路などの施設で、資産の整理は不可能に近い。3・3兆円の「年金積立金管理運用」も資産の大半は年金給付の財源となる積立金で、取り崩すことはできない。財務省幹部は「国が回収できる資産は限られている」と主張する。
自民党政権下で策定された独法の「整理合理化計画」では、不要と判断された独法の資産は約6000億円に過ぎなかった。民主党はより大胆に事業の要否を判断する方針で、ロケットの打ち上げなどを事業とする宇宙航空研究開発機構(JAXA)について「もはや必要ない」などの声も出ている。
だが、宇宙開発からの撤退は判断が分かれるところで、その他の事業の廃止も行政サービスの低下につながる恐れがある。民主党は、一つ一つの独法の事業を慎重に精査する方針だが、「事業廃止は高度の政治決断が必要になる」(財務省幹部)との声が出ている。
自民党政権下でも独立行政法人の見直しが議論され、福田康夫政権の07年12月に「整理合理化計画」を策定した経緯がある。しかし、当時の計画は101あった独法を16法人減らすだけにとどまった。08年4月に国会に提出された独法の通則法改正案は、今回の民主党案と同様、独法の不要資産を国が回収するなどの狙いがあったが、審議が行われないまま廃案となった。背景には、天下り先を失うことを恐れる霞が関官僚の強い抵抗があった。
独法改革の先頭に立ったのは渡辺喜美・元行政改革担当相。だが、整理合理化計画の策定のため、廃止できる法人を挙げるよう求められた各省庁は「ゼロ回答」で応じた。それぞれの閣僚との協議も難航を極め、渡辺行革担当相が思い描いた改革案は水泡に帰した。08年8月に渡辺氏が行革担当相を退任した以降は、改革の機運は急速に低下した。
民主党は政権公約で、国家公務員の天下りあっせんの全面禁止を掲げており、自民党政権ができなかった公務員制度改革を推し進める考えだ。独法の見直しは、「埋蔵金」を財源として活用するだけでなく、天下り先に膨大な国費が流れるシステムそのものを解体する狙いがある。
しかし、再び官僚の強い抵抗に遭う可能性も高い。独法の見直しは公務員制度改革の試金石で、新政権の力量が問われることになりそうだ。
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◆純資産の大きい法人(07年度末)◆
(1)日本高速道路保有・債務返済機構 6兆4117億円
(2)福祉医療機構 3兆6414億円
(3)年金積立金管理運用 3兆3225億円
(4)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 2兆3271億円
(5)雇用・能力開発機構 7003億円
(6)日本原子力研究開発機構 6436億円
(7)都市再生機構 5497億円
(8)中小企業基盤整備機構 4475億円
(9)宇宙航空研究開発機構 4165億円
(10)国立印刷局 3411億円
独立行政法人合計 約24兆4000億円
◆政府の補助金が多い法人(09年度予算)◆
(1)国際協力機構 2928億円
(2)宇宙航空研究開発機構 2410億円
(3)新エネルギー・産業技術総合開発機構 2346億円
(4)住宅金融支援機構 2240億円
(5)日本原子力研究開発機構 1848億円
(6)日本学術振興会 1568億円
(7)日本学生支援機構 1514億円
(8)農業者年金基金 1289億円
(9)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 1284億円
(10)都市再生機構 1141億円
独立行政法人合計 3兆4227億円
毎日新聞 2009年9月13日 東京朝刊