あいち・日曜リポート

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慢性的な赤字体質の蒲郡市民病院 /愛知

 医師不足による経営悪化などから全国の公立病院が厳しい運営を強いられている。県内でも一宮市立尾西市民病院や高浜市立病院が民間に経営移譲された。蒲郡市民病院も、病床利用率が60%を切るなど一時、存続が危ぶまれたが、経営努力や市民の協力で回復の兆しを見せている。「小康状態」の今、慢性的な赤字体質を少しでも改善できるか。【中島幸男】

 ◇経営改善へ市民も一役 競艇収益は黄信号

 蒲郡市民病院の医師の数は近年では01年の51人が最多だった。消化器内科医が派遣元の大学に戻るなどして08年10月には37人まで減少。同科を休診し、病棟の一部60床を閉鎖した。病床の利用率は08年11月には57・6%まで落ち込んだ。

 伊藤健一院長が自治会の総会に出向き、医師の負担軽減のため不要不急の受診自粛を呼びかけた。「あらゆる努力をした」(伊藤院長)結果、改善の兆しが見られるように。副院長の個人的な人脈もあって医師数は8月には42人に回復。病床利用率も73・6%(今年5月)にまで持ち直した。夜間の救急外来はピーク時(06年2月)の1日53・1人が、不況による市民の診察抑制もあって今年7月には同24・2人まで下がった。

 回復には市民も一役買っている。市の音頭で昨年9月に「まるごと市民病院応援団」が結成された。医師確保に向け、市を挙げての応援態勢をアピールする狙いもある。活動の一環として、市保育園父母の会は園児の保護者にアンケートを行い、市民病院の小児科医と診療のマニュアル作りに向けて作業中だ。

 また、市職員組合などでつくる「蒲郡市民病院を守る会」は約3万人もの署名を集め、神田真秋知事に医師確保を要請した。清水芳卓代表世話人は「気を緩めることなく、市民が医師を応援していることを訴え続けたい」と語る。今月27日には市民病院副院長を招いた2回目の交流学習会を開く。

 伊藤院長は「民営化は経営の安定につながるかもしれないが、医療の機能が必ずしも良くなるわけではない。地域医療の空白をつくらないために自治体病院が必要」と訴える。

 蒲郡市民病院は100億円近い累積欠損金を抱える。国の公立病院改革ガイドラインに基づき、診療科別の原価管理、職員の手当や薬品費の削減などの改革プランを作り、経営改善に取り組んでいる。病院の経営に大きく寄与しているのが好調な蒲郡競艇の収益だ。モーターボート競走事業会計から病院事業会計へ、07年度は18億円、08年度は23億5000万円を繰り入れ、今年度も16億円を見込んでいる。しかし、競艇の収益にも黄信号がともっている。収益は通年ナイターレース開催によるが、若松競艇(福岡県)に次いで今年度から丸亀競艇(香川県)も年間ナイターを導入。蒲郡競艇がこれまでのような収益を上げることができるか不透明だ。

 金原久雄市長は「競艇は来年度までは現在のような収益が期待できそう。それまでに医師を確保して収入を増やし、06年度以前の繰り入れ(6億円)程度で済むようにしたい」と話す。

毎日新聞 2009年9月13日 地方版

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