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16年夏季五輪:東京招致 施設予定地、生物の宝庫--カヌー競技場・葛西臨海公園

 ◇キアゲハ、ニホンアカガエル… 保護団体「見直しを」

 2016年の夏季五輪開催地に「史上もっともコンパクトで環境にやさしいオリンピック」を掲げて立候補する東京都。だが施設建設予定地には希少動植物が多く生息する葛西臨海公園(江戸川区)の森が含まれている。「自然豊かで、交通利便性も良い」として選ばれたが、地元住民や自然保護団体は「安易な理由で計画を進めてほしくない」と反発、見直しを求めている。【田後真里】

 葛西臨海公園は都が東京湾埋め立てで破壊された自然環境を再生しようと整備を始め、89年にオープンした。総面積約80万平方メートル。都はこのうち南西部の池や森のあるエリアをカヌー競技場にする計画を、国際オリンピック委員会(IOC)に提出している。東京オリンピック・パラリンピック招致本部によると、約28億円を投じて森を削り池を埋め、コンクリート製のコースや観客席を作る。五輪開催後はレジャー施設としての利用も考えているという。

 日本野鳥の会東京支部リーダーの金森光伸さん(49)は「23区内ではほとんど見られない生物の宝庫」と話す。都が保護上重要な野生生物種に指定するアカシジミをはじめ、キアゲハなどのチョウ類が舞い、池にはトウキョウダルマガエル、ニホンアカガエルなど5種のカエルが生息。鳥類では約170種類の水鳥、山野の鳥が確認され、渡り鳥の中継地にもなっているという。同支部は8月、計画を近隣の遊休地に変更するよう石原慎太郎都知事らに陳情した。

 保護には住民がボランティアで携わってきた。その一人、飯田陳也(のぶや)さんは「20年かけてやっと豊かな生態系をはぐくむ森ができた。地元の声や環境を無視した計画を見過ごすわけにはいかない」と訴える。

 開催地は10月2日にコペンハーゲンで開かれるIOC総会で決まる。招致本部の石井浩二副参事は「開催が決まれば、地元と協議して最大限自然に配慮するつもりだ」と話している。

 ◇コンパクトさ売り

 東京都は「競技施設の9割が半径8キロ以内に集中している」コンパクトさを売り物の一つにしている。競技会場の34施設のうち23施設は既存施設を活用することにしているが、メーン会場となる10万人規模のオリンピックスタジアムを中央区晴海に新設するほか、カヌー・スラローム会場となる葛西臨海公園には1万2000人の観客席を持つ会場が設けられる予定。

毎日新聞 2009年9月5日 東京夕刊

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