衆院選福岡2区で初当選した稲富修二氏(39)=民主=が2007年4月の福岡県知事選出馬の際、選挙費用収支の余剰金として生じた約1900万円の使途が不明のままになっていることが3日、分かった。稲富氏の選挙費用の大部分は、国からの政党交付金の配分を受けた民主党県連が負担。事実上、公費で賄われた色彩が強く、「国民への説明責任を果たすべきだ」との指摘が出ている。
県選管によると、稲富氏は落選した同知事選で収入4011万円、支出2261万円とする選挙運動費用収支報告書を提出。収入のうち4000万円は党県連からの推薦料だった。他方、支出のうちポスター作製費用160万円は公費負担で、これを除いた収支でみると、約1900万円の余剰金が生じていた。
選挙運動を目的とした収入は原則非課税。法定の範囲内での支出金を除いた余剰金は自身の資金管理団体への寄付金に回すなどして政治活動に使った場合は、政治資金として収支を報告する必要がある。稲富氏の場合は報告がなく、余剰金の使途は明らかにされていない。
本紙の調べでは、稲富氏は07年3月6日に党県連から4000万円の推薦料を受領。県連はその前日に党本部から5000万円の資金配分を受けていた。民主党は政治献金を受けているが、収入の8割以上は政党交付金に依存している。
県選管によると、同知事選で4選を果たした麻生渡知事は、収入2196万円の全額を使い切った報告書を提出、余剰金は生じていなかった。
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●「分からない」 後援会事務所
西日本新聞社は今回の問題について、稲富修二氏に再三説明を求めてきたが、3日までに回答がなかった。稲富氏の後援会事務所は同日夜「今の事務所では詳しいことが分からない。知事選当時の選対本部長に確認した上で説明したい」と答えた。
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●処理方法の法整備を
▼岩井奉信・日本大法学部教授(政治学)の話 余剰金の処理に関する法的定めがないため、うやむやになった事例が多い。国は法整備を検討すべきだ。
選挙収入は選挙運動や政治活動に使われるのが原則。余剰金の行方があいまいで、個人所得のような状態になると、本来の目的に使われたのか確認ができない。使途については説明責任があると考える。余剰金は資金管理団体に寄付するなどして使途が見える形にするのが望ましい。
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▼選挙費用
公選法で各種選挙の有権者数などに基づいて支出の上限額が定められる。候補者は全支出について領収書を添付するなどして選管に報告する義務がある。2007年福岡県知事選での支出上限額は約5281万円。収入に関しては上限がなく原則非課税。余剰金の処理方法に関しては規定がなく、告示・公示前の活動費用は選挙費用に含まれないなど不明朗な部分もある。
=2009/09/04付 西日本新聞朝刊=