9月11日(ブルームバーグ):民主党の山口壮「次の内閣」防衛副大臣はブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、北朝鮮のミサイル開発などを受けて自民党政権が進めてきたミサイル防衛は「役に立たない」などと述べ、民主党を中心とする新しい連立政権では2010年度以降は予算規模の縮小を検討すべきだとの認識を明らかにした。
インタビューは10日行った。山口氏は、防衛省が提出した2010年度概算要求で防衛関係費が前年度比3%増と伸びたことについて「あれだけ不祥事が続いている防衛省がなんで3%増だという感じはする。子ども手当や教育、医療など他にいろんなことをやらないといけない」として、増額を認めるべきではないとの考えを示した。
その上で、具体的な見直し対象として、「ミサイル防衛は役に立たない。撃ち落せる確率は100分の1か2ぐらいだ。比重を下げられる」と述べ、弾道ミサイル対応にかかわる経費を挙げた。
防衛関係費は2003年度から09年度まで前年度比で7年連続減少していたが、4月の北朝鮮によるミサイル発射などを受け、防衛省は2010 年度概算要求で前年度比3%増の4兆8460億円と増額を求めた。このうち地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の追加整備など弾道ミサイルへの対応経費として1761億円(前年度当初比58%増)を計上している。
山口氏は対北朝鮮問題については「拉致問題で完全に北朝鮮が認めれば日本の援助が始まり、北朝鮮の民主的な傾向が強くなる。時間はかかるがそれしかない」と述べ、地道な外交努力で解決を図ることが必要と訴えた。
早稲田大学の重村智計教授は民主党政権が誕生した後の日朝関係に関して、「米韓が北朝鮮とかかわりを持つ中で、日本も対話を持つべきだという考えが民主党の中ではやや強い。日朝交渉まで行かなくても、日朝の接触が始まるかもしれない」との見通しを示した。
一方、同志社大学の村田晃嗣教授は「ミサイル防衛が役に立たないという見方は自民党にもあるが、インド洋での給油活動にノー、普天間飛行場は沖縄県外への移設などの民主党の外交政策とあわせると、疑念を招く。日米関係に危ないだけでなく、クレデイビリティ(信頼性)が下がる」と語った。
アフガニスタン
山口氏は54歳。外務省出身で2000年に初当選。現在3期目。米ジョンズ・ホプキンズ大学大学院で国際政治学の博士号を取得した外交安全保障政策の専門家だ。
16日にも誕生する鳩山由紀夫内閣の外交安全保障面での最優先課題としてはアフガニスタンを挙げる。
インド洋での海上自衛隊による補給活動については「アフガンの解決には一切、役に立っていない。いくらやっても意味がない」と指摘。その上で、「米国にとってアフガンの問題はベトナム戦争以上の大きな泥沼だ。日本が非軍事の解決策を示して対話のテーブルをセットすることで戦争から脱出できるようにもって行くのが最大の務めだ」と述べ、外交を通じた解決を模索する必要性を強調した。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 広川高史 Takashi Hirokawa thirokawa@bloomberg.net