3党の連立が決まり、民主党にとって次の課題は、「脱・官僚」の政治をどう実行に移すかです。実は既にこの「脱・官僚」を実践しているのがイギリスです。しかし、イギリスでは今、そのあり方に疑問の声が上がっているのです。
「官僚任せになっていた日本の政治というものを蘇えらせる」(民主党 鳩山由紀夫代表)
民主党が目指す「脱・官僚政治」、いわゆる政治主導。
「イギリスをモデルにした新しい官僚と内閣の関係をつくっていく」(民主党 菅直人代表代行)
二大政党制が定着しているイギリスでは、官僚たちがいずれの党にも肩入れしないことが前提として求められ、所属省庁に配置された議員以外との接触も禁止されています。
「政権が保守党から労働党に移れば官僚は労働党を歓迎し、忠誠心をもって彼らの政策実行を助ける」(イギリス公共政策研究所 ガイ・ロッジ氏)
こうした政と官の関係を次期政権のモデルに掲げる民主党は、イギリスにならい、政府に国会議員100人を送り込み、政治主導を進めることをマニフェストに盛り込んでいます。
しかし、そのイギリスで今、この政治主導のあり方そのものに疑問の声が上がっているのです。これは、「よい政府」と題されたイギリス議会の報告書です。政府に「ジュニアミニスター」と呼ばれる国会議員120人が送り込まれているイギリスですが、この報告書では、その数が多過ぎると指摘しています。
今年6月、下院の行政特別委員会が発表した報告書の中では、日本の副大臣や政務官に相当する「ジュニアミニスター」について、こんな証言が。
「彼らは出世のためにニュースの話題づくりに必死だ」
「訳もなくジュニアミニスターの数が多い。やたら記者会見をしたがる」
「ジュニアミニスター」は、いわば若い政治家の登竜門。経験不足の議員が多いとも言われ、彼らは選挙対策のため、メディアを意識した政策ばかりを打ち出そうとする傾向があるといいます。
「彼らは毎日メディアのコメントに悩まされるようになる。新聞を中心としたメディアを味方につけておくことが絶対的に必要なものになる。選挙対策として。だから、メディアの反応なしでは何も進まない」(イギリス下院行政特別委員会 ケルビン・ホプキンス議員)
その結果、今、イギリスでは長期的視点での政策づくりができないと官僚たちが混乱しているといいます。
さきの総選挙で多くの新人議員が当選した民主党。イギリスで指摘される混乱は起きないのでしょうか。菅代表代行とともにイギリス議会を視察した古川元久衆院議員はこう話します。
「日本の場合はまずそもそもそういう(政治主導の)体制が今までなかった。まずは『政』と『官』の役割分担をつくるというところから始めなければならない。大事なことは役所に入っていく政治家が大臣以下、みんなひとつのチームになること」(民主党 古川元久衆院議員)
新人議員で務まるのかとの問いには・・・
「初当選した中にはいろんな経験をしてきている人がいます。そうした経験を生かして官僚を国民の目線で仕事をできるように導いていくことは新人議員でもできると思う」(民主党 古川元久衆院議員)
イギリス議会の報告書では、ジュニアミニスターたちへの専門的訓練制度の創設をうたうなど、政治家の質の向上について提言しています。
「今、政府はとても不健康なものになっている。政府はときにメディア受けしなくとも正しいと考えるものは打ち出さなくてはならないのに、短期的な視野のメディアに惑わされずに。議員に能力の高い人物が必要」(イギリス下院行政特別委員会 ケルビン・ホプキン)
議員を政府に多数入れるだけでは真の政治主導は進まない。政治家の資質がより問われることになります。(09日18:00)