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夏の風物詩「チューペット」生産再開断念 カビに勝てず

2009年9月9日11時1分

写真:サンプルとして保管してあるチューペット。今後、市場で見られることはない=大阪府八尾市の前田産業サンプルとして保管してあるチューペット。今後、市場で見られることはない=大阪府八尾市の前田産業

 凍らせて食べるポリ容器入り清涼飲料水「チューペット」の生産・販売が終了した。生産元の前田産業(本社・大阪市港区)によると、5月にカビの混入が見つかり、生産を休止して対応策を検討していたが、コスト面から再開を断念したという。チューペットは30年以上、夏のお菓子の定番として全国的に親しまれてきただけに、インターネットの掲示板などに惜しむ声が続々と寄せられている。

 同社によると、チューペットは75年に発売。最盛期には年間約1.3億本を売り上げ、ポリ容器入り清涼飲料水の「代名詞」になった。最近は果汁100%の製品を発売して低価格品とすみ分けるなど、なお年間約6千万本を安定して販売していたという。

 しかし今年5月、カビの混入が発覚。自主回収して調べたところ、いずれも毒性は弱いものの、2種類のカビを確認した。チューペットは原料溶液を約115度で殺菌し、ポリ容器に詰めた後に約85度で再び殺菌する。カビは容器に詰める際に混入し、約85度の殺菌では死滅しなかったとみられるという。

 ポリ容器の強度の問題で、2度目の殺菌温度はこれ以上高くできないという。カビの混入を完全に防ぐようにするには、約3500平方メートルある工場の半分を造り直さなければならないことがわかり、同社は再開を断念。8月中旬にホームページで生産終了を公表した。

 ネット上では「残念」「好きだったのに」といった惜しむ書き込みが相次いでいる。同社のホームページの閲覧数も1日あたり400程度だったが、8月末には4万以上に増えたという。同社飲料水事業部の飛野光昭・営業副本部長は「全国的に名前が通った商品の幕を下ろすのは本当に残念」と話している。(田之畑仁)

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