Serkan ANILIR

先端技術を応用し、インフラに依存しないで暮せる空間技術の開発と研究 INFRA-FREE LIFE (IFL)

『アニリール・セルカンのブログ 』
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『インフラフリー居住モデル・・・21世紀の新しい建築モデルとして』

今、地球の環境問題が叫ばれる中、あらゆる企業が率先して「地球に優しい住宅」の開発にいそしんでいます。しかしその多くは今までどおりの電気や水道、ガスなどの既存のインフラ設備に依存しているのが現状です。

ここで私が取り組みたいのは、このような状況を変えていく第一歩として21世紀社会の避けられない問題である人口問題や難民問題、そこから派生する衛生管理の問題、また地球環境への負荷対策、今後起こりうる災害問題に適した「インフラフリー」の住環境を研究していくことです。

「インフラフリー」に使われる技術は色々ありますが、特にここで特徴となるのは宇宙開発分野の知識と上記の事象を大胆、かつ具体的に結び付けようとしている点です。宇宙技術分野では、宇宙ステーションに代表されるような『限られた資源と空間の中でいかに快適に居住できるか』という総合的な住環境システムを長年研究し続けています。その最先端の研究成果をいかに私たちの住む環境に応用していけるか、というのが重要なテーマになるのです。

この研究では東京大学のみならず、国内外の目標を同じくする他大学や企業と連携をとり、進めていくことを考えています。中でも実験的「インフラフリー」施設としては世界的に研究の進んでいる、NASAジョンソンスペースセンター内の施設「バイオプレクス」 やESA(ヨーロッパ宇宙開発事業団)の施設「NEUMEYER」との共同研究も視野に入れており、必要に応じて見学や現地での研修を取り入れ、そこで行われている事柄の理解、技術の移転、その応用を行うことも検討しています。

学生の皆様と一緒に取り組んで行きたい具体的な研究内容として、以下の項目を考えています。

@災害対策および難民対策:どのような過酷な環境においても、インフラに頼らずに快適な住環境を整えられる技術
A環境対策:環境にかかる負担の低減。特に経済発展地域や人口爆発地域に必要な対策をとられる技術
B人口問題対策:砂漠や海上など、一般に居住できないとされていた地域への新たな居住地の選択
C形態および構造学:環境や状況に適した「インフラフリー」居住空間の形態や構造、建設などのデザイン、及び維持、管理に関わるマネージメントを開発する構想。
Autonomy(外部に依存しない独自の循環システム)
Mobility(場所や環境を選ばず建築できるシステム)
Interactive (相互関係性を構築できるシステム)
ISRU/In Situ Resource Utilization(実際にシステムが使われる地域の材料や技術、人材を活かしたシステム)
Energy(これらの環境に適した最善のエネルギー開発)

これらの研究に関しては坂本・松村研究室において過去2年間研究されており、IMSの協力において、地上建築や宇宙構築物の専門家および企業とのコラボレーションがなされ、すでに応用できる可能性のある技術の抽出と吟味は終わっています。もちろんそれには様々なバリエーションがあり得ますが、まず技術の移転を行い、産業化できる可能性のバリエーションをある程度具体的に提示して、評価することが目標です。

宇宙技術を使った居住空間を具体的にかつ複数案提示しようとするにあたり、3年を目標に研究計画を立てています。実際に市場で実用化されるには、さらに産業ベースでの開発期間を必要とすると考えられますが、そこにスムーズに至ることができるまでの成果を上げられると考えています。また社会・産業への技術還元および新しい技術展開分野の創出を検討しています。また災害や難民問題などこれからの21世紀に起こりうる問題への対策となることで、国際社会に大きく貢献できるとも考えています。

初年度:複数の居住空間モデルの想定と、そのモデルの構築に必要とされる要求条件の整理、またそこに応用可能な宇宙技術の特定と使用条件の確認
2年度:複数の居住空間モデルの企画、設計とその評価。また産業側のニーズ分析に基づく産業化構想の立案
3年度:3〜4種の居住空間モデルの基本設計およびそこに盛り込む具体的な技術仕様の決定。産業分野からの参加メンバーの拡充

21世紀の新しい建築像は皆さんの中にある想像力が担っているのです。一緒にその想像力を形にしていきませんか。

 

略歴

・1973年 ケルン生まれ(国籍:トルコ共和国)
・1995年9月  イリノイ工科大建築学専攻卒業
・1996年9月 イスタンブール工科大建築学専攻卒業
・1997年9月  プリンストン大学講師
・1999年2月  バウハウス大学建築学修士課程修了
・2001年4月 NASAアドバンスプロジェクトチームリーダー
・2003年3月 東京大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了
・2003年4月 日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)講師
・2005年5月 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 助手
・2006年4月 東京理科大学 非常勤講師
・2007年4月 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 助教
・2007年4月 和歌山県串本町 大使
・2008年5月 ナポリ大学 客員教授
・2008年10月 つくば大学 非常勤講師
・2009年3月 モントリオール大学 客員教授

学会活動
・日本建築学会建築生産専門研究委員会委員
・米国航空宇宙学会 デザイン・エンジニアリング委員会技術開発小委員会委員長
・日本建築学会 情報システム技術委員会 情報社会デザイン小委員会委員
・日本建築学会 建築・都市環境将来モデル特別研究委員会委員
・日本建築学会「建築雑誌」編集委員会委員
・経済産業省 アジア消費トレンドマップ研究会員

研究業績

<著書(出版書籍)>
・アニリール・セルカン  2006:宇宙エレベータ (大和書房)
・アニリール・セルカン  2006:タイムマシン (日経BP社)
・アニリール・セルカン  2009:ポケットの中の宇宙(中央公論)
・ANILIR S.、‘Buildings in the Information Age’, (修士論文の出版), バウハウス大学出版, 1999年9月
・ANILIR S., “エコ手法とその事例-A View to Ecological Architecture”,(EUによって依頼された研究、参考文献としてヨーロッパの大学や建築関係のオフィスに配本される)、メタ出版, 2002年7月
・ANILIR S., “ATA Tower- How to design a 36000km-height infra-structure”, Feasibility Study funded by TAI, published by TAI- Institute for Advanced Concepts, TAI/CP-2003-000104, (実現可能な研究としてTAIによって助成金受けた研究結果の出版)、2003年2月
・ANILIR S, “GUIDEBOOK”, (革新的な視点を取り入れた宇宙物理学を一般読者に紹介する書籍)、大和書房出版、2005年9月(出版予定)
・ANILIR S., “2018年に着工予定された宇宙エレベーターの建築方法- Gateway to Heaven- How to construct the space elevator by the year 2018”,(ELEVATOR’2005国際科学学会が主催するプロジェクトとして参加および地上建築への技術移転を提案する), スミソニアン出版, 2005年の10月(出版予定)

<原著論文>
・ANILIR S., BANAZEWSKI K., BLASZCZYSZYN M., GOLEBIOWSKI P., LINDNER R., PINDOR B., et.al., “Advanced Technology Paths for redeveloping of old cities taking ‘Zamosc’ as a case study”, ENTERポーランド建築専門月刊誌, Ed. 1’97, p.26-27, ISSN 0867-4566, 1997年1月
・ANILIR S., SCHOENFUSS S., MULLER T., “Ecological Habitat Design Considerations in extreme environments”, バウハウス大学建築・構造専門月刊誌, Vol. 1/1998, p.13, 1998年12月
・ANILIR S., “From Past to Future- Japanese High-tech solutions”, トルコ建築学会発行の建築専門誌, Vol. 2/00, p. 34-40、2000年2月
・ANILIR S., “The Role of Space-Based Manufacturing in an Evolving Space Economy”, NATOの宇宙航空研究開発技術専門誌、2003年5月
・ANILIR S., “ A Proposal to understand the 11th Dimensional membrane universes and their architectural forms in space environment”, Physical Review Letters, ケンブリッジ大学出版, 2003/09, p. 39-50、2003年9月
・ANILIR S., “Energy for Housing in the 21st Century- Advanced Technology Paths from Space Solar Power into Terrestrial Architecture”中東工業大学(METU)建築・構造専門雑誌特別版(日本建築学会建築生産専門研究委員会と共同で), Volume 23, Number 9-10, p.43-53、2003年9月
・ANILIR S., “Terraforming Mars”, Cover title, p.12-18, Popular Science 科学専門誌12月番, 2003年12月
・DAMIEN R., ANILIR S., “A Proposal to develop an Undersea Habitat as an Analog for Long-Duration Space Flight in the Mediterrean Sea”, Turkish National Oceanic and Atmospheric Administration (TNOA) 月刊誌, 2004/04, p. 23-36, 2004年4月
・ANILIR S., “Proposal for air-filled construction systems to develop ultra-high rise buildings in earthquake zones”, TASARIM建築専門月刊誌, 2004/08, p.73-78, ISSN 1300-7351, 2004年8月
・ANILIR S., “Space Station Architectures- Educational development pattern for a new design and engineering field”, ARRADEMENTOイタリア建築専門月刊誌, ISSN 1300-3801, 2004年12月
・ANILIR S., “Infra-free structures: Proposal for development of housing and disaster units by transferring space technology into Earth architecture”, Art’ Decor Magazine, 2005年6月
・ANILIR S., NATORI M.C., “Proposal of a Golden Angle-based Platonic solid combination to define the root of all existing forms in nature”, FORM-A Structure and Form Magazine、2005年10月(予定)
 <学会発表論文>
・ANILIR S., 2000年8月, “Japanese Base-Isolation Systems and application possibilities in Turkey”, Proceedings from the Turkish Board of Construction Engineers Annual Meeting 2000, Vol.1, p. 20-28, Istanbul, Turkey
・ANILIR S., 2001年10月, “How to stabilize a space-elevator on an equator-located oceanic platform and technology transfer”, Proceedings TAI, TAI2001 Conference、Antalya, Turkey
・ANILIR S., 2002年1月, “Converting Compression structures into Tensile Structures; How to built high-towers regarding the Space Elevator as an example”, 2002 TMMOB Structure Conference, Istanbul, Turkey
・ANILIR S., 2002年5月, “ATA” Commercial Space Development Plan, an orbital space settlement and business proposal to establish a permanent space presence and make a profit”, Proceedings from the 23rd International Symposium of Space Technology and Science, Matsue, Japan
・NOZAKI K., ANILIR S., MATSUMOTO S., et.al., 2002年10月, “A Flexible Interior Design Concept for Space Applications”, Proceedings from the American Institute of Aeronautics and Astronautics (AIAA), COSPAR World Space Conference, Houston, U.S.
・ANILIR S., 2003年7月, “Near Earth Objects (NEO) as Material Resources for future In-situ Resource Utilization(ISRU) Applications”, Proceedings from Society of Automobile Engineers (SAE), Vancouver, Canada
・ANILIR S., MURAKAMI Y., KOMURE Y., 2003年9月, “Design of a Low-Earth Orbit (LEO) Hotel connected to a Space Elevator”, Proceedings from Space 2003 Congress, American Institute of Aeronautics and Astronautics (AIAA), Long Beach, CA, U.S.
・ANILIR S., 2004年1月, “The Architecture of Space in 4th Dimension”, Invited Speaker to the Annual Yearly Meeting of Design Engineering Technical Committee (DETC), American Institute of Aeronautics and Astronautics (AIAA), Reno, U.S.
・ANILIR S.、2004年3月, “Industrial Processes and Management in Space Manufacturing for Converting Asteroidal Materials into Useful Construction Elements”, Proceedings from Earth & Space 2004, The American Society of Civil Engineers (ASCE), Houston, U.S.
・WILSING M., ANILIR S., AKPINAR N., 2004年3月, “MICRO-G Architecture- An Innovative Design and Education Experience in Turkey”, Proceedings from Earth & Space 2004, The American Society of Civil Engineers (ASCE), Houston, U.S.
・ANILIR S., NATORI M.C., 2004年6月, “The Architecture of Space- Origin of Forms in Nature”, Proceedings from the 24th International Symposium of Space Technology and Science (ISTS), Miyazaki, Japan
・ANILIR S., NATORI M.C., 2004年10月, “Proposal of a Golden Angle-based Platonic solid combination to define the root of all existing forms in nature”, 20th Symposium of Space Structures and Materials, Japanese Aerospace Exploration Agency (JAXA), Kanagawa, Japan
・MATSUMURA S., ANILIR S., 2005年7月, “A vision in the 21st Century architecture: Development of Infra-free Habitation, Sanitary and Disaster Modules ”, UIA2005 Conference, Istanbul, Turkey
<特許>
・EU Patent 3,743,229 ‘SPIDER FACADE SYSTEM’, July 2001
・US Patent 6,324,603 ‘AIR-SUPPORTED CONSTRUCTION SYSTEM’, October 2002
<その他>
・トルコ共和国元ジュニアー・ナジョナル・スキー選抜選手(長野オリンピックのトルコナショナル・スキーチームの監督スーパーバイザーとして参加)
・2004年に トルコ人初宇宙飛行士候補 (現在、訓練中)
・2004年に MARQUIS WHO’S WHO世界歴代人物リファレンスブック 科学者部門に記載される
・2005年に ケンブリッジ大学物理学部 特別科学賞を表彰される
・2005年からABI(American Biographical Institute) 委員会員
・2005年からCNN 科学や建築番組及びウェブ記事スーパーバイザー。又はCNNトルコ科学部 担当者
・2005年に科学や技術の開発の結果による、America Medal of Honor(アメリカ名誉賞)受賞


 

  Copyright 2007-09 Matsumura & Fujita laboratory.
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