発信箱

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

発信箱:選挙に行きたい!=磯崎由美

 69・28%。衆院選小選挙区の投票率が現行制度下で過去最高になった。この数字には、今年20歳になり初の国政選挙に臨んだN美さんの1票も含まれている。

 自閉症のN美さんはレストランの仕事が休みの日、不在者投票に行った。母(53)は娘に各候補者と政党を説明し「いいと思った名前を書くのよ」と送り出した。迷わず投票用紙に向かい大人の責任を果たした娘が、母には誇らしい。「親の私もしっかり選ばなきゃって思いました」

 知的障害者と選挙については04年に千葉県手をつなぐ育成会がアンケートしている。回答者666人中、約35%が投票に行っていた。町が選挙ムードになると投票が気になってくる人。候補者名を書く練習をしてその日を待つ人もいる。ところが現行法では相続問題などに備え法定の成年後見制度を利用すると、障害の程度や事情にかかわらず一律に選挙権を失ってしまう。

 約20年前から立候補者を招き演説会を開いている社会復帰施設・滝乃川学園(東京都国立市)では、今回も約40人が候補者らの訴えに耳を傾け、半数が投票に行った。一方で、親が高齢の人には将来のために成年後見制度をすすめざるを得ない。突然投票できなくなった人に「なぜ?」と聞かれるたびに、職員は「私たちも矛盾を感じているのに、どう説明すればいいのか」と悩むという。

 悪質な施設が判断能力の不十分な入所者を誘導し、特定の候補者に投票させるといった選挙違反も起きている。しかし事件防止を重視するあまり、政治に参加する大切な手段が奪われるのはおかしい。そもそも成年後見制度は障害者や高齢者の暮らしと権利を守るために作られたはずだ。(生活報道部)

毎日新聞 2009年9月2日 東京朝刊

発信箱 アーカイブ一覧

PR情報

 

おすすめ情報

注目ブランド