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新型インフル:救急外来6時間閉鎖 都内の病院で8月

 新型インフルエンザが全国的に流行する中、ピーク時の医師不足や、急増する感染者らが救急外来に集中する事態の広がりが懸念されている。東京都内では発症者が一度に訪れ、6時間近く救急外来が閉鎖に追い込まれた病院も出ている。救急外来が長時間閉鎖されれば、一般の救急患者の命にかかわりかねない。【河内敏康】

 都内の病院で救急外来が一時閉鎖状態に陥ったのは8月29日。高校文化祭行事の全国大会に出場するため、都内を訪れていた沖縄の県立高校の生徒が相次いで高熱を出した。引率教師は医療機関にいくつか電話をかけたが、いずれも受診を断られた。

 この病院に高校側から受け入れ要請の連絡が入ったのは午後4時ごろ。入院も可能な2次救急医療機関。この日は病院の多くが休診する土曜日で、救急外来の当直は常勤医3人と研修医1人の計4人だった。左足にやけどを負った認知症の高齢者や抗がん剤の影響で白血球が減少した患者ら計5人の処置に全当直医が追われていた。

 救急外来を閉鎖するわけにはいかず、一度は受け入れを断念した。高校側はその後も医療機関に断られ、都などの相談窓口に連絡したがつながらなかった。生徒らの受け入れ先が決まらなかったため、病院では午後6時に受け入れを決定し、救急外来を閉鎖した。

 午後6時40分ごろ、生徒16人と教師、保護者がタクシーで到着。処置室は、感染症に対しリスクの高い患者ばかりだったため、救急外来の一室や廊下を隔離し、生徒を収容。当直医4人のうち1人がインフルエンザ治療薬タミフルを処方するなどして治療。ようやく閉鎖が解けたのは午後11時45分ごろだった。

 治療に当たった小林一彦医師は「感染のピーク時にはもっと大勢の患者が救急外来に殺到することが予想される。救急外来がパンクし、一般の救急患者が救えなくなるのを防ぐためにも、軽症者はなるべく救急外来での受診を控えたり、地域の診療所などの協力の下、軽症者の救急外来での受診を回避できる仕組みを早急に作ることが必要」と話す。

 ◇「軽症は地域の開業医へ」

 新型インフルエンザの流行ピーク時に医師や看護師などの不足を予測し、地域の医療体制の維持に多くの都道府県が懸念を抱いていることが、毎日新聞の全都道府県アンケートで明らかになった。

 秋田県は「医師や看護師は緊急に充足できるものではなく、限られた中で対応していかざるを得ない」と回答。岩手、山形、千葉、静岡などの各県は、新型インフルエンザの流行が医師不足に拍車をかけることを懸念する。秋田県の担当者は「日常的に医師不足なので、心配してもどうにもならない部分がある。その中で対応せざるを得ない」と話す。

 大きな流行となった沖縄県では、救急外来に週末を中心に1週間で400人の患者が押し寄せ、「機能がパンクした医療機関も出た」(同県医務課)という。このため県内では3日から、軽症者は地域の開業医などが休日や夜間でも診療する体制がスタート。救急病院が重症患者に集中して対応できる体制を整えた。また、「医療機関を受診する前に電話で相談する人も多い。このような要員も必要で、相談ダイヤルなどの開設にも補助してほしい」とも要望している。【江口一】

毎日新聞 2009年9月8日 2時30分

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