2009年9月8日0時29分
「サトウ トスオ」と氏名が記されたカード。右下の個人ファイル欄が空白になっている=モスクワ、副島写す
【モスクワ=副島英樹】第2次世界大戦後にシベリアなど旧ソ連に抑留された日本軍人らの個人情報を記した新資料を、ロシア国立軍事公文書館が朝日新聞に公開した。カード形式で約75万枚。シベリア抑留の全体像の解明につながると期待されている。全資料はスキャンしてCD化され、日本側に提供される。
個人カードは図書館の検索用の目録に酷似。「サトウ」「スズキ」などと仕分けされた木箱の引き出しが約750個ずらりと並び、一つの引き出しに約1千枚のカードが保管されている。
カードには収容所の番号をはじめ、「氏名」「誕生年・生誕地」「職業」「軍階級」「捕虜になった場所と時期」「移動歴」など、表と裏に計13の欄がある。それぞれの収容所で手書きされ、かすかに変色していた。
カードは館内の別の収納庫に保管されている約56万人分の個人ファイルを引き出す目録の役割を担う。コロタエフ副館長によると、カード2〜3枚に重複している人もあり、最終的にカード数はファイル数に近づくとみている。
逆に、引き出し一つ当たりに5〜8枚程度、個人ファイルの番号欄が空白のカードがあり、数千人分の新情報になる可能性がある。日本の厚生労働省は、モンゴルを除くシベリア抑留者を約56万1千人、うち死亡者を約5万3千人と推定しているが、これまでロシア側から提供された死亡者名簿は約4万1千人分。死亡推定者の日本側資料とカードを照合し、死亡時期や埋葬地の解明など空白を埋めることも期待される。
日ロ両政府はカードの写しの提供で月内にも正式に署名する方向で、費用負担などを調整中。カードのCD化作業に1年弱かかるとしている。