JAZZ CROSSROARD レポート

August
07
2009

 週初から懸案のJAZZ CrossRoard の発売がようやく始まりました。このモデルの開発には、非常に梃子摺った様子をこのブログにも何度か書きましたが、最終的には目標通りの冷却性能をほぼ獲得できたと思いますし、前モデルと比較しても遥かにベンチレーション性能は高いものと成りました。今日は、開発も終了し非常にタイトな8月の生産日程をやり繰りして、予定通りの進捗が可能という報告を受けましたので、詳細についてのレポートさせていただきます。

 

■■■ JAZZ CROSSROARD ■■■

 

 先ずは、賛否両論となっている(らしい?)マスクデザインについて。今回のモデルではあえてマスクデザインの変更を見送りました。プロトタイプではいくつか製作しましたが、結局前モデルとシルク印刷のデザイン以外、変更しませんでした。もちろん、営業的には新しいデザインであるほうがインパクトも出て有利であることは、承知しています。しかし、今のデザインそのものの完成度が非常に高いというか、テクニカルな部分も含めて変更する余地があまり無いことも変更しなかった大きな理由となります。しかし、主要な理由は、短期間にモデルの陳腐化を助長する戦略的なデザイン変更よりも、継承することによる安心感を選択した結果です。この時代ですから、デザインを変更して、差別化を図ることがいかに重要かを差し引いてもあえて、伝統の継承とか落ち着きとか、そういう部分を大切にしたかったということがあります。先日、同じような考え方をAPPLEもしているという記事を見かけて、少々嬉しくなりましたが、経済的に大きな変動があって、市場も大きく変化しつつある今、従来の拡大戦略を見直すというのは非常に重要なことだと思います。JAZZにしても、初代をお使いのお客様もまだまだいらっしゃいますし、先代は確実に現役だろうと思います。その意味では、最新のJAZZがでて、現在使っているモデルと同じ印象であるなら、ユーザーの皆様にも喜んでいただけると思います。これからは、「良い製品を長く使っていただく」ということが、今まで以上、格段に重要な時代になったと思います。

 

 デザインでもう一つ言えば、ここ数年ゲーマー向けのモデルは、BOUTIQUE CASE という呼ばれ方を(海外では)しています。国内ではこの呼称はそれほど浸透していませんが、要するに使うだけでなく「見せるためのケース」という意味で「BOUTIQUE」という言葉が使われているのですが、実際PCゲーマーの文化は、EURO諸国やアメリカで非常に発達しています。この不況でアメリカは少々弱っているといわれていますが、EUROではまだまだ盛んなのです。ゲーム市場も日本はあっというまに追い越され、いまやアメリカとEUROは巨大市場と化しています。その流れもあって、PCゲームは日本と比較にならないほどに盛んなのです。それをうけて、海外のケースメーカーは非常に大きなATX規格で、装飾がバッチリと施されたケースを出していますが、確かにゲーマー向けという迫力はあると思いますが、大人が使うには少々派手すぎる・・・。そんな感覚は否めません。しかし、考えても見れば、初代JAZZを出したときの感覚は、まさに「BOUTIQUE」という言葉がピッタリ合うようなものでした。「変わったケースがでた」ということで、業界の話題を独占したわけですが、自作用PCケースで初めて、明確に「見せる」という要素を持ったケースであったと思います。ですから、今回JAZZを開発するに当たって、新しいデザインを作るというよりも、「大人が使えるレベルの洗練」のほうがしっくりとくるのではないかと考えました。まさか、同じ土俵でBOUTIQUEと呼ばれるカテゴリで競争つすつもりは毛頭ないので、これでいいと自信を持っています。

 

  □□デザインビュー□□

 

 > http://windy-online.com/case/jazz_cr/design.html

 

 さて、今回の目玉は、というよりも今年から新たに開発を行うケースすべてに共通して言えることだと思いますが、冷却性能、ベンチレーション性能のレベルアップは、最重要課題になっています。その冷却性能についてですが、以前のようにオーバークロックするために・・・という冷却性能ではなく、何よりも現在の動作環境にたいする冷却量の増加、という意味と、パーツの耐久性を維持できる冷却性能のポテンシャルアップということです。現在のPCスペックは非常に高度なものとなっています。CPUにしてもチップセット周りやSSDに対するデータアクセス速度、メモリも含めて非常に高速化しています。このバランスを維持するということは、以前のPCと比較してもまるで別物のような性能です。裏を返せば、CPUのピンポイント冷却だけでなく、マザーボードのCPUマウントを中心とする周辺そのものをある程度重視する必要があるのです。今秋、Windows7やGoogleのOSなどが続々登場しますが、どれもテーマはその動作スピードに集中しています。軽々と動作することを、すべてのユーザーは望んでいます。パソコンだからと、起動するまでに数十秒もじっとしていなければならない理不尽さを許容しない時代といえます。それはOSだけでなくアプリもブラウザもメーラーもすべてそういう傾向でしょう。それをCORE i7 SSD環境で動作させるわけですから、これはもう次元が違ってくるわけです。自作マシンは、その超高速ワールドの尖兵となるわけですから、冷却はより重要な要素となってきます。そして、グラフィクス性能の進化は、CPU以上に過激、かつ急速なものです。もう少し、発熱等を考慮できないのか、と思うほどに容赦なく動作クロックを上げてきます。2way-SLIなどは、CPUならDUAL COREですか。DUAL CORE ENGINEを使えばQUADということ。あのトランジスタ数をあのクロックで動作させれば、発熱量はもう半端じゃないです。その冷却が、あまりに貧弱なことも以前から非常に気になっていました。ですからWiNDyは常に、PCI冷却専用オプションを発売してきましたし、CPUと同じ次元でPCI周辺の冷却を強化してきた心算です。しかし、現段階はCPUよりも遥かに冷却強化をしなければ、長時間動作ができないほど過酷になっています。ですから、この冷却性能をいかにしてJAZZにあたえるのか、というのは最大の課題だったと思います。さらに、これを少々強調しなければなりませんが、電源の大出力化によって、冷却必要量が大幅に増加しているということです。電源が大出力となればおのずから電源自体のベンチレーションは強化されます。しかし、ケースに搭載する以上、ケース内部温度以下にはなりようがないのです。電源が吸気するエア温度に電源冷却がすべて依存する、という事実を我々ケースメーカーはもっと真剣に対策してゆかないといけません。最近の電源トラブルの多発傾向は、電源そのものの品質にも当然依存しますが、搭載ケースの電源が吸気するポイントのエア温度も原因していることは否定できません。こういう状況が目前にあって、WiNDyの全モデルを見直そうというのが、今回の一連のモデルチェンジのきっかけでもあったわけで、まして「BOUTIQUE」を名乗るJAZZで冷却性能のポテンシャルアップをしないわけには行きません。

 

 冷却概念>テクニカルアプローチ

 

 > http://windy-online.com/case/jazz_cr/feat1.html

 

 今回の開発では、もちろんシャシーはすべて新設計しています。大きな変更箇所は、HDD搭載位置の変更、SSD搭載、ファン搭載方法の変更となっていますが、上下2箇所から吸気したエアーをケース中心部でぶつけ合うCROSSFLOWとすることで、CPU周辺の拡散効果を促し、乱気流の発生でケース内部を攪拌してゆこうというのが、エアフローの意図です。特に上部の吸気ファンからのエアフローは、HDDを取り除いた結果非常に強力にCPU周りに到達します。これがいかに重要であるかは、プロトを重ねるたびに痛感したことでもあります。(プロト失敗の原因はクロスフローのバランスが悪くCPU周辺が思ったほどの冷却効果がでなかったということでした)。当然、構造物でファンの角度や位置に失敗すれば、作り直しになってしまうわけです。ですから、最新作(JAZZ CROSSROARD)は、こと冷却性能に関しては、前モデルとは別物と考えていただきたいと思います。それでも、PCI周りの冷却が心もとないわけで、ケース背面に強烈な専用オプションを用意して、SLIに余裕で対応できるようにしています。実際、内部オプションよりもケースエアフローを阻害しない外部オプションの方が、遥かに効果的なのは言うまでもありません。

 

 □□冷却性能□□

 

 > http://windy-online.com/case/jazz_cr/feat_cool.html

 

 HDDは、搭載ホルダーを設け、新たに搭載箇所を確保しました。この位置は、HDDにとってはまさにうってつけの場所で、冷却効果は従来とほぼ変わらないと思います(FX2000で実験済みです)。 そしてほとんど発熱しないSSDは、シャシー上部に専用ホルダーを設けました。そして、FX2000同様、JAZZ CROSSROARDもまたATXマザー、EXTENDED ATXマザーがどちらでも搭載可能という、強烈な拡張性を与えてしまいました。DUAL CPUでまわしたいユーザーも、これなら大きなケースを求めなくてもOKだと思います。昔はMT-PRO3000というとほうも無いフルタワーケースを作ったものですが、今は・・・・・。もうこれで十分なのだろうと思います。

 

 □□拡張性□□

 

 > http://windy-online.com/case/jazz_cr/feat_extend.html

 

 最後に、ここ数年、何度か加工場所を変更し、技術的に少々甘くなってきた部分もありました。現在の製造は、昨年からお願いし始めた工場と、以前からお願いしていた工場でのタンデム生産です。技術的なレベルの統一や加工ノウハウの指導、整備に時間が必要でした。もっと、早い段階でJAZZを出したかった。何せ、WiNDyの象徴ですから。しかし、1年間、じっくりとモノづくりに向き合ったことも決してムダではなかったと思います。

 

 最後に仕上げですが、アルマイトにもう一つのハイライトが誕生しています。これもまたWiNDyが始めてだろうと思いますが、PCケースのマスクを化学研磨処理付アルマイトを使っています(Chemical Polished Silver)。アルマイト処理のプロセスで薬品研磨をしてアルミ表面のサラ付きをなくした上で、シルバーアルマイトをするという、これまた非常に手の込んだ処理なのですが、その仕上がりは非常にナチュラルで奇麗なものです。通常アルマイトではえられない光沢が、よりアルミ素材に近く、人気が出ると思います。(’実感は、アルミアッシュトレイのページで確認していただけます)

 

 Chemical Polished Silver

 

 > http://windy-online.com/case/jazz_cr/images/lineup/cps.jpg

 

 > http://windy-online.com/alumi_items/ashtray/images/ex_03.jpg

 

 WiNDy再スタートの記念すべき第一作は、ALCADIA FX2000でした。今回のJAZZ CROSSROARDは第二作ということに成りますが、非常に性能の高いモデルとなっています。まもなく、先着50名様の割引も終了とのことなので、是非¥5,000-引きとなる先行予約をご利用ください。

 

 

 

Posted by 有海啓介 | この記事のURL |