「やっぱり」? それとも「エーッ」? 予想通りというか、びっくりというか、先の衆院選では民主党が新政権を担う結果になりました。くらし流「ああ政治」のテーマは「私がこの党、この人に1票を入れたワケ」です。「高速道路無料化はホントに大丈夫?」「子ども手当につられて」--。くらし流の「1票」が見えてきました。【まとめ・中西拓司】
「民主党に投票しました。憲法など必ずしも自分の考え方と一致していませんが、今回は政権交代の可能性を考慮しました」という意見を寄せたのは長野県安曇野市、主婦、田島彰子さん(47)だ。民主党には、より多くの国民が幸福感を持てる政治を期待する。
そして「まじめに一生懸命努力している人間が正当に評価される社会であってほしい」と願い、医師の現状を例に挙げた。「勤務医は大変厳しい条件で、過労死するほど働きながら報酬はそれほど多くはない。それ対し開業医はかなり優遇されている。こうした社会の矛盾点を一つ一つ改める努力をしてほしい」
埼玉県深谷市、パート女性(53)は「4人の子どもを育てている娘は1人月2万6000円の子ども手当につられ民主党へ投票した」という。自分は共産党に投票し、夫と息子は「誰がやっても(政治は)同じ」と棄権した。
大阪市住吉区、美容師、ネコパンチさん(60)は比例代表で「みんなの党」に入れた。「自民党で閣僚までしたのに離党し孤軍奮闘する渡辺喜美代表に1票を投じたいけれど選挙区が違う。せめて比例代表で応援したいと思いました」
埼玉県飯能市、無職、原雄次さん(74)は小選挙区、比例代表とも自民党に投票した。
原さんは民主党へ投票した人に次の3点の疑問を投げかける。
(1)高速道路の無料化はいいのか(2)公立高校の授業料無償化はいいのか(3)消費税を上げないで、打ち出の小づちはあるか。
高速料金は休日1000円にするだけで渋滞になった。原さんは「無料なら大混乱」と懸念する。また授業料無償化も「財源は配偶者控除の廃止分で充てる」と指摘したうえで「あまり声を上げない弱者からの増税分で高校生を甘やかすことは悪政では?」と批判する。そして、昨秋以降の経済不況は「どんな政党が政権を担っていても起こったはずです」と分析し「自民党を政権から引きずり降ろすことでは何も解決しない」と主張している。
東京都町田市、小学校講師、白石二三子さん(61)は各党のマニフェストを見比べて投票したという。「『よりよく』ではなく『まだまし』の選択しかできませんでしたが、『30人学級の実現』を掲げた共産党に入れました」
学校現場の経験から「公立小学校はどんな家に生まれた子にも学力をつけるための最初で最後のとりで」と考えている。「30人学級が実現されれば即、教育の質向上といじめの減少が図れると現場で確信しているからです」
毎日新聞 2009年9月6日 東京朝刊