文化庁は4日、08年度国語に関する世論調査の結果を発表した。チームなどを指揮することを表す「さい配を振る」を「さい配を振るう」と本来とは異なる使い方をしている人が58%に上った。「破天荒」「御の字」なども過半数が本来とは異なる意味を選んだ。一方、特に若い世代で「日本語を大切にしている」と回答した割合が飛躍的に上昇した。【加藤隆寛】
3月に全国の16歳以上の男女1954人を面接方式で調査した。二つの選択肢から本来の言い方である「さい配を振る」を選んだ人は28・6%だった。「敷居が高い」の意味として、本来と異なる「高級過ぎたり上品過ぎたりして、入りにくい」を選んだ人は10~30代で7割超、50代以上で3割程度と、世代間に大きな差があった。
また、「来ることができる」の意味で「来れる」を用いるなどの「ら抜き表現」を言葉の乱れではなく変化だと考えている人の割合(41・0%)は01年度調査と比べ8・5ポイント増。考えを言葉にして伝えるより「察し合って心を通わせることを重視する」と回答した割合(33・6%)は99年度比で10・3ポイント増だった。
一方、若い世代で「日本語を大切にしている」と回答した割合が飛躍的に上昇。01年度比で全世代平均(76・7%)は7・6ポイント増、10代(72・2%)は28・4ポイント増だった。
「美しい日本語とはどのような言葉か」の質問には、「アナウンサーや俳優などの語り方」の回答が16・8%で、01年度比で9・6ポイントの大幅減。「控えめで謙遜(けんそん)な言葉」は40・0%で、01年度比で11・2ポイント増えた。文化庁国語課は「日本語ブームに乗って興味を持つ若い人が増えてきた」とみる一方、「空気が読めないと言われないよう、状況に気を使うことが『大切にすること』だと考えているのでは」と分析している。
さらに、外来語60語の理解度も調査。理解度が低かったのはインキュベーション(起業支援)やキャピタルゲイン(資産益)などで、「分かる」「何となく分かる」と答えた割合の合計はそれぞれ9・2%、22・2%だった。
生活に必要な情報を何から得ているか(三つまで選択)は、パソコン(インターネット)が29・8%(01年度比17・2ポイント増)に達し、特に30代(55・0%)と40代(47・4%)で01年度比30ポイント以上増えた。新聞は76・6%(01年度比10・5ポイント減)、テレビは86・0%(同6・6ポイント減)だった。
==============
(数字は%)
■どちらの意味だと思う?
※◎が本来の意味
◎いつも 14.1
すぐに 66.8
◎誰も成し得なかったことをすること 16.9
豪快で大胆な様子 64.2
◎大いにありがたい 38.5
一応、納得できる 51.4
◎相手に不義理などをしてしまい、行きにくい 42.1
高級過ぎたり上品過ぎたりして、入りにくい 45.6
◎何もせずに傍観している 40.1
準備して待ち構える 45.6
■どちらを使う?
※◎が本来の言い方
◎さい配を振る 28.6
さい配を振るう 58.4
◎お眼鏡にかなう 45.1
お目にかなう 39.5
◎噛んで含めるように 43.6
噛んで含むように 39.7
■理解度が6年前より上がった外来語
※「分かる」「何となく分かる」と答えた割合。上昇率の高い順。カッコ内は02年度調査時。
モチベーション 73.8(45.0)
モニタリング 63.3(43.6)
インサイダー 71.2(52.7)
アプリケーション 50.6(34.2)
コンテンツ 54.1(38.8)
アイドリングストップ 75.5(62.5)
毎日新聞 2009年9月5日 東京朝刊