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カプセルホテル難民

きっかけはパチンコ代欲しさの借金

窃盗罪の41歳被告に、あす26日判決

 「計画的に金をため、人間らしく生きていきたい」――。住居のない5年間の暮らしの末、カプセルホテルの脱衣所で高級腕時計を盗んだとして窃盗罪に問われた男は、名古屋地裁で行われた被告人質問で、今後の人生に話が及ぶと、背筋を伸ばして言い切った。

 男は元運送会社アルバイト野村力被告(41)。起訴状によると、昨年8月に名古屋市のカプセルホテルで、客が置き忘れた100万円相当の腕時計を盗んだとされる。

 検察側の冒頭陳述などによると、野村被告は自衛官や警備員として約17年働いた。つまずきのきっかけはパチンコ代ほしさで手を出した消費者金融。会社に取り立て電話がかかるようになり、仕事を辞めるとアパートにも住めなくなった。

 夜から朝まで運送会社で荷物の仕分けのアルバイトをして、昼は1日約2000円のカプセルホテルで仮眠をとる暮らし。1日1食のファストフードが唯一の食事だった。

 腕時計を質屋に持ち込んで手にした約60万円は、3か月で使い果たした。

 検察側は、「遊興費ほしさの犯行で再犯の恐れもある」と、懲役1年6月を求刑した。一方、弁護側は「被告はカプセルホテル難民として貧困生活を送ってきた。事件の背景には非正規雇用の労働者が困窮している社会問題がある」として執行猶予付きの判決を求め、結審した。判決は、あす26日に言い渡される。

(松田晋一郎)

 警察、司法担当記者が垣間見た、社会の縮図の人間模様を、随時報告する。

2008年5月25日  読売新聞)
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