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《にっぽんの争点:国と地方》「分権」一色 表現には差

2009年8月24日10時33分

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 「国と地方の代表者が協議する機関の設置を法制化」(自民)

 「国と地方の協議の場を法律に基づいて設置」(民主)

 「国と地方の代表等が協議を行い、地方が権限を有する『分権会議』を法定」(公明)

 今回の各党のマニフェスト(政権公約)の地方関連部分には、似た言葉が並ぶ。国が地方の言い分を聞き置くだけというあり方を改め、地方側の権限を明確にした対等な協議の場をつくる。そんな全国知事会の要望を多くの党が受け入れたからだ。ほかにも権限の移譲に、国の出先機関の廃止・縮小――。「国の責任の放棄」にくぎを刺す共産を除けば、ほぼ分権一色だ。

 その背景には、橋下徹・大阪府知事や東国原英夫・宮崎県知事らの登場で、首長の声を無視できなくなったことがある。「協議の場」も橋下氏が強く主張。自民、民主とも07年参院選の政権公約では触れていなかったが、自民は早々と盛り込み、民主も公約を公表した後で追加した。

 ただ、子細に見ていくと、各党の違いが浮かぶ。

 例えば、不透明さを「ぼったくりバー」にたとえられた国直轄公共事業の費用の一部を地方が負担する制度。民主は「廃止」と記したが、自民は「抜本的に見直す」。国が使い道を限定して自治体に配る補助金についても、民主が「自由に使える一括交付金」に改めるとするのに対し、自民は「見直し」にとどめた。霞が関とタッグを組み、国の権限を力の源泉としてきた自民にとって、それを手放すのは簡単なことではない。

 逆に、民主が明記しなかったのが地方税拡充だ。自民は税制抜本改革の際に「地方消費税の充実」を図るとした。消費税論議を封印した民主には、そうした表記は難しい。

 道州制については、各党の違いがもっと鮮明だ。前向きなのは公明。おおむね10年後から移行するなどと時期やイメージを示した。自民は具体像は示していないが、17年までの導入をうたった。

 民主は小沢一郎代表のころ、市町村を再編した300の基礎自治体と国の2層構造にする案をまとめたが、道州制を唱える橋下知事らの動きにあわせて軌道修正。マニフェストには記さなかったが、政策集に「将来的な道州の導入も検討」と盛った。

 道州制に明確に反対しているのは共産と新党日本。「国の責任を投げ捨て、地方に押しつけるもの」(共産)、「不毛な論議」(新党日本)などと批判している。

■やる気・やり方、不透明

 地方分権は、これまでも有識者による委員会が勧告を重ねてきた。国の仕事を自治体に委ねる機関委任事務廃止など一部は結実したが、歩みは遅い。権限を奪われる霞が関の中央省庁と、自民の族議員が強く反発してきたからだ。

 「アバウトな公約で、実行されない政治を長年担当してきたのは自民党。どうやって信じればいいのか」。全国知事会が自民、民主、公明の3党を招いて7日に開いた公開討論会では、地方側から自民への不信の声が相次いだ。

 実際、自民の政権公約に記されたのは、地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)などが勧告してきたものばかり。同党の菅義偉・選挙対策副委員長は、それを実現できていない理由について「政権与党としてできる部分とできない部分があった」と釈明したが、橋下知事は「なぜこれまでできなかったことが変わるのか。その点は腑(ふ)に落ちていない」と不信感を隠さなかった。

 一方の民主党。討論会では玄葉光一郎・分権調査会長が「地方分権改革推進委員会が勧告してきた以上のことをやる」と強調した。

 だが、地方側からは「無駄をなくして財源を確保すると言うが、できるのか」「(民主の公約に沿って)ガソリン税などの暫定税率を撤廃すれば地方税収が減ることが予想されるのに、穴埋め対策が明確でない」。自治体にとって、まず気になるのは懐具合。「三位一体改革」の名のもとに地方交付税を減らされた経験があるだけに、財源の充実どころか減りはしないかと不安をぬぐえないのだ。

 知事会によるマニフェストの評価では、こうした点が減点されたせいで、民主は自民よりも2点以上低い58.3点の評価に終わった。

 地方財政に詳しい神野直彦・関西学院大学教授は、自民の政権公約について、地方交付税の財源確保策などは「思い切ったことを言っている」と評価したうえで、「見直す」などの表現を「あいまいだ」と指摘した。民主については「地方の自主財源をどう充実させるのかが見えない」として「住民にとって、どの党が税金の使い道を分かりやすくし、自分たちの権限を増やしてくれるかを見極めることが大切だ」と呼びかける。

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