「酌量の余地などみじんもない」。山田和則裁判長の指弾の言葉が法廷に響いた。厚木市の社会福祉法人「紅梅会」が運営するグループホームに入所していた知的障害者の20代女性への準強姦(ごうかん)事件。横浜地裁小田原支部で24日、求刑通り懲役7年を言い渡された同ホーム元当直員、加茂昭雄被告(68)は微動だにしなかった。女性の両親は「墓に入るまで絶対に許せない」と怒りを隠さなかった。
事件発覚の発端は女性の預金通帳だった。小遣いや障害基礎年金をためた約100万円あるはずの残高が約30万円しかない。今年1月に両親が尋ねると、女性は「言ったら殺される」と涙ながらに、数年前から受けていた被害を初めて訴えた。
本来は女性に代わり通帳を管理する施設の世話人が、家族に無断で女性に渡していた。その通帳から約70万円を下ろしたことを加茂被告も公判で認めた。
女性を連れ込んだホテルの利用料金やパチンコ代、自分の生活費……。女性の努力の証しを加茂被告は使い込んでいた。判決が認定した性的暴行は3回だけだが「約30回暴行を加えたことを被告は自認している」と、あえて言及した。
女性の両親は閉廷後「娘は貯金が好きで、いつも小遣い帳を付けているような子。こんな形で娘の金を使っていたなんて許せない」と憤った。量刑に不満はないと言いつつ「娘の一生も家族も全部壊れた。被告が墓に入るまで絶対に許せない」と話した。【山衛守剛】
毎日新聞 2009年8月25日 地方版