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日本の戦争体験、漫画が伝える 中国・南京大虐殺記念館

2009年8月30日9時20分

写真:南京大虐殺記念館に展示されている、日本人の戦争体験を描いた漫画=南京、奥寺写す南京大虐殺記念館に展示されている、日本人の戦争体験を描いた漫画=南京、奥寺写す

写真:南京大虐殺記念館に展示されている漫画。高倉健さんの学徒動員の経験も紹介されている=南京、奥寺写す南京大虐殺記念館に展示されている漫画。高倉健さんの学徒動員の経験も紹介されている=南京、奥寺写す

 【上海=奥寺淳】日本の漫画家が自身の戦争体験を描いた「私の八月十五日展」が中国・南京の南京大虐殺記念館で始まり、連日、数千人が訪れている。旧日本軍の残虐行為を展示する施設に「日本人も戦争でつらい思いをした」という視点を持ち込む試みだが、中国の市民には冷静に受け止められているようだ。

 同展は「丸出だめ夫」で知られる漫画家の森田拳次さんらが戦争の記憶を伝えようと始め、ちばてつやさん、松本零士さんらが賛同して出品。00年から日本各地で展示し、中国での開催は初めてだ。

 大陸からの引き揚げ者である森田さんは「記憶の奥の奉天」と題した作品で、玉音放送に泣き崩れる大人を見つめる6歳の自分と、日本の敗戦を喜ぶ中国人でにぎわう奉天(現・瀋陽)の様子を表現した。このほか、大切に育てた野菜を軍人が掘り起こし、涙を流す子供の様子などが紹介されている。

 164点の作品は、1937年の南京事件など旧日本軍の残虐さを強調した通常の展示の後に見学するコースになっている。湖南省から来た看護師(38)は「虐殺した日本人とこっちの日本人は全然違う」。女性会社員(29)は「日本人も家族がいて普通の人なんだと思えた」と話す。

 記念館の朱成山館長によると、公式ウェブサイトに2人が抗議の書き込みをした以外、メディア、市民からも否定的反応はない。

 開催の交渉に当たった作家の石川好さんは「漫画でなければ、おそらく受け入れられなかった。日本人も悲惨な体験をしたことを知ってもらい、前向きな議論ができる雰囲気になれば」と話す。

 同展は11月15日まで。ハルビン、天津での開催も計画している。その後、同記念館で常時展示される予定。

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